世界イノベーション指数、中国初のトップ10入り 日本は小幅上昇
中国・重慶で5日開かれたロボットサッカー大会|dyl0807 / Shutterstock.com
世界知的所有権機関(WIPO)が「世界イノベーション指数(GII)」2025年版の結果を公表した。対象は139か国。トップ10の過半をヨーロッパ勢が占める一方、中国が10位で初めてトップ10入りした。長らく工業大国とされてきた日本やドイツは伸び悩む一方で、アジアやアフリカの新興国が順位を大きく上げている。
◆首位は2011年から不動 中所得国が台頭
GIIはWIPOが毎年発表するランキングで、2025年版は78指標に基づき各国のイノベーション力を評価した。
1位はスイスで、2011年以降の首位を維持。2位スウェーデン、3位アメリカ、以下、韓国、シンガポール、イギリス、フィンランド、オランダ、デンマーク、中国の順だった。ドイツは昨年9位から11位に後退。日本は昨年13位から12位へと一つ順位を上げた。
全体では、中国に加え、インド、トルコ、ベトナムなど中所得国の健闘が目立つ。さらに、セネガル、チュニジア、ウズベキスタン、ルワンダなどが「ダイナミックなイノベーション・パフォーマー」として急成長中と評価された。
◆中国が初のトップ10入り 牽引役となるか
初のトップ10入りを果たした中国は、研究開発費の継続的増加やハイテク輸出、イノベーションがもたらす経済・社会的成果が総合スコアを押し上げた。
イノベーション・クラスター(地域に集積するイノベーション活動)のランキングでも、「深セン・香港・広州クラスター」が1位となり、長年首位だった「東京・横浜クラスター」を抜いた。北京は4位、上海・蘇州も6位となり、複数の中国クラスターが上位に食い込む結果となった(2025年はVCデータを加味する手法変更も影響)。
北京市社会科学院の王鵬研究員は、世界経済の減速や外部環境の逆風があるなかでも、中国は世界的なイノベーションの主要な原動力であり続ける条件を備えると指摘。政府の支援策と実装の拡大で、今後いっそう勢いを増すと見通した(中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の英字紙「グローバル・タイムズ」)。
一方で11位に後退したドイツについて、GII共同編集者のサシャ・ヴンシュ・ヴィンセント氏は、長期的に見れば過度な警戒は不要だとし、今回の順位はトランプ政権期の関税の影響を反映していないとも付け加えた(ロイター)。WIPOのダレン・タン事務局長も、ドイツは強力な産業革新の基盤を維持しつつ、デジタル分野での強化が課題だと述べている(同)。
◆投資は鈍化も技術は前進 焦点はAI
報告書は懸念材料も指摘する。研究開発支出の伸びは世界金融危機以降で最も低い水準に減速し、ベンチャーキャピタルの取引額も2023年の大幅減から十分に回復していないという。
それでも、イノベーションそのものは停滞していない。クリーンエネルギー、電気自動車、5G、ロボティクスは着実に普及が進んでいる。人工知能(AI)については影響の全体像がなお不透明だが、その変革力は疑いようがないとまとめている。




