ネット対応進める北朝鮮 ただし国民は国内イントラネット内のみ

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【平壌・AP通信】 常軌を逸するほどに慎重になりながら、北朝鮮はインターネットに接続しようとしている。

 医師たちはライブビデオ会議を通じて診察を行うことができる。国民はスマートフォンを使ってメッセージのやりとりを行う。特権階級に属する人たちの財布の中には、電子ショッピングやオンラインバンキングに使うカードが入っている。そしてこれらはすべて、中堅企業が自社の従業員の使用に供するような厳重に閉じたイントラネット上で行われる。

 アフリカの小国エリトリアを除けば、北朝鮮は最もインターネットを受け入れていない国家である。国民の大半にとってグローバルなインターネットへのアクセスは想像すらできないことであり、ほぼ誰一人として個人のコンピューターや共有されていない個人のメールアドレスを保有している人はいない。

 しかし、インターネットの時代に育った初の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)にとって、さらに繋がった北朝鮮という構想は多くの利益をもたらす可能性を秘めている。また同時に、これは国民を社会的・政治的にコントロールする新しい管理形態でもある。平壌当局が採用したソリューションは上下階層分離方式である。信頼のおけるエリート層は比較的自由にインターネットを利用できるのに比べ、一般大衆は徹底的に外界から隔離された国内イントラネット内に留め置かれ、一部始終を注意深く監視され、寸分の隙もなく作成された管理ソフトウエアに組み込まれている。

 広大なガラス張りの「朝鮮科学技術殿堂」には、北朝鮮最大の電子図書館が設けられ、ここに3,000台を超える端末が設置されている。化学専攻の大学院生、パク・ソンジン氏は小論文を執筆するために訪れた。

 監視の下での必要最小限の使用ではあったものの、大半の北朝鮮国民とは違ってパク氏には多少のインターネット使用経験がある。もし、パク氏がインターネット上で何かが必要となった場合、公認の大学関係者が彼のためにそれを見つけ出してくれる。

 今日、同氏は国民イントラネットを利用している。国民イントラネットは、単にアクセスをブロックするだけではなく完全に隔離してしまうユニークな方法の、いわばインターネット上の北朝鮮の分身とも言えるシステムだ。

 パク氏がアクセスしている国内ネットワークを、北朝鮮の人たちは「光明(クァンミョン)」と呼ぶ。彼は、「ネナラ(我が国)」と呼ばれる、FireFoxに手を加えたブラウザでレストランのページ、自身の大学のウェブサイト、さらには料理やオンラインショッピングのサイトを訪れる。「光明」上には168のサイトが開設され、公式発表によると政府機関、学校、図書館および企業向けの独立したネットワークへ広範に接続されている。

 北朝鮮の多くのコンピューター同様、科学技術殿堂にあるデスクトップ機は「Red Star(赤星)」オペレーティングシステムがインストールされている。このオペレーティングシステムはLinuxのオープンソースコードを基にして開発された。流出した「Red Star(赤星)」オペレーティングシステムのどのバージョンにも、ほとんどのユーザーには見えない邪悪とも言える機能が実装されていることが明らかになっている。

 コア機能に変更を加えようとしたり、ウイルスチェッカーを無効にしたりしようとすると、自動的に再起動を繰り返す。USB経由でダウンロードされたファイルには電子透かしが付与され、当局がそのファイルを特定して犯罪行為や破壊的活動につながりそうな予兆を追跡することができる。さらに、トレースビュアーが表示されている画面のスクリーンショットを定期的に取得する。

 アメリカ政府から支援を受けている「オープン・テクノロジー・ファンド」の副委員長、ナット・クレチュン氏は、北朝鮮が使っている検閲や監視を行うソフトウエアの種類によって同国の新しい情報管理戦略が明らかになった、と語る。以前は、情報の統制は、基本的に大量の工数を掛け、人海戦術で実施されていた。しかし、インターネットの出現によってこの統制戦略が破綻をきたしたため、北朝鮮当局は監視のためのまた別のツールとして、オンライン上のデバイス自身を利用して情報の統制に適用する方法を習得した。

「北朝鮮では、携帯電話やイントラネット対応デバイスは(一見自由を促すように見えるが)結局は監視とコントロールを可能にしている」とクレチュン氏は言った。同氏は北朝鮮とインターネットとの関わりを長年にわたり研究している。

 北朝鮮の人々の最も一般的なオンライン体験は、ノートパソコンやデスクトップパソコンでは行われない。スマートフォン上でのオンライン体験が最も多いのだ。

 人口2,500万人の北朝鮮において、250~300万台の携帯電話が普及していると推定される。3Gサービスの導入によって過去5年間に携帯電話の利用が拡大した。その推進力は外資2社、タイのロックスレイ・パシフィック社とエジプトのオラスコム・テレコム・メディア・アンド・テクノロジー社の投資に依るところが大きい。

 外界から遮断されたイントラネット同様、北朝鮮の電話は国外へのアクセスを拒否する。北朝鮮の人たちは国内イントラネット内でネットサーフィンをしたり、自撮り写真を送ったり、何百という着信音を選んでダウンロードしたりできる。しかし、彼らはそのネットワーク外の電話番号とは通話できない。つまり、世界の他の国々とは電話を使った送話や受話を行うことができない。

 北朝鮮がIT製品の一部を輸入し、改変を施して独自ブランドとしていることはもはや疑いの余地がない。ところが、過去数カ月の間に、北朝鮮の企業2社が国内ブランドとして発表した商品が世界中のアップル製品愛好者の間で特に物議を醸している。スマートフォンの「ジンダラエ(アゼリア)Ⅲ」と「リョンフンiPad」だ。これらの機種がアップル社の製品に酷似していることや、「iPad」の名を臆面もなく冠していることは特に驚くに値しない。というのも金正恩(キム・ジョンウン)がアップル製品好きであることは良く知られているからだ。

 北朝鮮のプログラマー達もアップル製品から何らかの着想を得た模様だ。

 外部の専門家たちは、AppleがOS XやiOSで使用しているものと同様のプログラムが、「Red Star」に組み込まれているセキュリティー機能を無効化する試みを阻もうとする仕掛けの基礎になっている、と考えている。この仕掛けは今や北朝鮮の携帯機器に不可欠だ。そして、2014年までに、全てのスマートフォンのオペレーティングシステムは、政府の承認署名を有しないアプリケーションやメディアを拒絶する電子透かしシステムを導入するためにアップデートされた。これは、アップルが許可のないアプリをアップストアでブロックするのと同じ仕組みではあるが、北朝鮮の場合、この仕組みが情報へのアクセスを統制する役割を果たしている。

 北朝鮮における全てにおいて、金正恩(キム・ジョンウン)は常に付きまとう。だから、最も人気のあるアプリの1つが「ボーイ・ジェネラル(少年の将軍)」という北朝鮮国内で制作された大ヒットアニメシリーズをもとに作られたロールプレイングゲームであることも納得がいく。ちなみにそのアプリの価格は1.80ドルだ。

By ERIC TALMADGE
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP