植物幹細胞の“成長スイッチ”を特定 トウモロコシとシロイヌナズナで未知の遺伝子発見

画像はイメージ( F_A / Flickr

アメリカのニューヨーク州の研究者らが、トウモロコシとシロイヌナズナの芽の幹細胞を最新技術で解析し、未知の成長スイッチとなる遺伝子を特定したことが明らかになりました。

【画像】単一細胞RNA解析で明らかに 植物の成長を制御する新たな遺伝子ネットワーク

幹細胞アトラスを公開 作物の収量や耐性改良につながる新発見

アメリカのコールド・スプリング・ハーバー研究所の研究チームは、この成果を「PR Newswire」を通じて公表しています。

植物の幹細胞は、芽や根の先端に存在し、葉や茎などをつくり出す役割を担っています。

幹細胞のはたらきを解明することは、植物の成長や収量をコントロールする手がかりになるとされてきました。

研究チームは、芽の組織から幹細胞を含む細胞を採取し、「単一細胞RNAシークエンシング」と呼ばれる手法で解析しました。

これは細胞を一つひとつばらばらにして、それぞれの細胞の中でどの遺伝子が働いているか(RNAの量)を調べる方法で、これにより細胞ごとの特徴を詳しく知ることができます。

その結果、幹細胞に特有の遺伝子が数多く見つかり、成長を制御する新たなスイッチの存在が判明しました。

特にトウモロコシでは、既知の幹細胞制御因子と関連づけられる遺伝子も確認され、植物の大きさや形に影響を与える可能性があるということです。

将来的にはこの研究を生かして、より丈夫で収量の多い作物の開発や、食料問題の解決に向けた新たな品種改良につながることが期待されています。

例えば、厳しい天候にも枯れにくいトウモロコシや、同じ畑からより多くの収穫が得られるイネをつくるといった応用です。

植物の「設計図」に隠されていた新しいスイッチを見つけたことで、農業の未来を少し自由に設計できるようになる可能性が示されており、世界の食料安全保障に貢献する可能性があります。

この研究を率いたデイヴィッド・ジャクソン教授は、「遺伝子発現のアトラスを得られたことが大きな成果です。これを公開すれば研究コミュニティ全体で活用でき、他の研究者が同じ実験を繰り返す必要はなくなります」と述べています。

Text by 本間才子