「ブラックホールが衝突したら重力波が広がるはず」 アインシュタインらの理論、裏付けを確認

画像はイメージ( Hubble ESA / Flickr

2つのブラックホールが40億光年離れた宇宙で衝突し、その重力波が地球に届いたことで、アルベルト・アインシュタインとスティーヴン・ホーキングの理論が改めて裏付けられたと報じられています。

【動画】40億光年先の衝突が裏付けた一般相対性理論とホーキングの予言

この件は「Live Science」など複数のメディアが伝えています。

ブラックホールの重力波を観測

ブラックホールは、大質量の星が寿命を迎えて崩壊した残骸で、強い重力のため光すら通さないとする天体といわれています。

またブラックホールはペアで存在することがあり、互いに回り合いながら少しずつ近づき、最後には衝突してひとつになると考えられています。

こうした現象を数式で理論化しようとしたのが理論物理学者アインシュタインとホーキングでした。

アインシュタインは1916年に一般相対性理論を発表。

「重力は質量が時空を曲げることで生じる」と示すとともに、もし正しければブラックホール衝突の際に重力波が広がるはずだと予言しました。

ホーキングもこれを支持し、さらに衝突後には新たにできるブラックホールの表面積が必ず大きくなると主張したのです。

当時はブラックホールを「光さえ逃げられない穴」とみなすしかなく、その性質を確かめる方法はありませんでした。

こうした理論が正しいかどうかを検証を可能にしたのが、アメリカの重力波観測施設LIGO(ライゴ)。

全長4kmのL字型トンネルにレーザーを通し、わずかな距離の変化を測定する装置を使って、宇宙がほんの少し伸び縮みする様子をとらえることに成功しました。

観測では、太陽の32倍の質量を持つ2つのブラックホールが高速で回転しながら合体する現象をとらえました。

合体し新たに誕生したブラックホールは太陽63個分の質量となり、毎秒100回転で自転していると推定できました。

このときのブラックホールの地平面は、合体前の2つを合わせた約24万3,000km²から、合体後には約40万km²へと拡大。

日本の国土とほぼ同じ大きさに達し、ホーキングが唱えた「ブラックホールの表面積は必ず増える」という主張が初めて実証された形になります。

加えて、合体直後にブラックホールが振動しながら安定する「リングダウン」と呼ばれる過程も記録され、その波形はアインシュタインが提唱した一般相対性理論の予測と一致しました。

現在、LIGOなど国際共同研究の観測能力は大きく向上しており、ブラックホールの合体はかつては数カ月に1度の検出だったのが、いまでは数日に1度の頻度で観測されているということです。

この出来事にネット上では「アインシュタインはやはり天才だ」「どうして当時からこれほどのことを知ることができたのか」と改めてその功績に驚きの声が上がるとともに、「宇宙の本質に科学者は目を向けるべきなんだね」「重力波は宇宙の鼓動だ」といった反応も見られました。

Text by 本間才子