火星探査で新たな手がかり 生命の候補“バイオシグネチャー”を示す岩石を採取

画像はイメージ( Kevin Gill/ Flickr

NASAの探査車「パーセベランス」が、火星で生命活動の痕跡となり得る岩石を見つけ、注目を集めています。

【動画】「ヒョウ柄の岩」に潜む謎 パーセベランスが火星で生命痕跡を探る

この件は「ABCNews」他複数のメディアが報じています。

火星に生命がいる可能性

岩石は「ヒョウ柄の岩」とも呼ばれ、淡い斑点の周囲に濃い縁取りがある独特の模様があります。

研究者らはこれを酸化還元反応の痕跡と解釈しており、電子の移動を伴う化学反応が起きていたと推測できるそうです。

さらに同岩石からは有機物も検出されており、その特徴は地球で微生物活動によって生成される鉱物や模様と似ています。

ただし、現時点で化石そのものが見つかったわけではなく、研究者らは「バイオシグネチャー(生命の痕跡の候補)」という慎重な表現を用いています。

調査が行われたのはイエゼロ・クレーターに流れ込む古代の河川域で、軌道から明るく見える「ブライト・エンジェル層」と呼ばれる堆積層です。

堆積物の層状構造は川や湖の環境で形成された痕跡で、液体の水が存在した環境は生命が存在し得る条件として重要視されています。

過去にも火星探査で有望な手がかりが報告された例があります。

2004年に着陸した探査車「スピリット」は、地球で微生物が作ることのある「指状構造(オパライン・シリカの指状突起)」を見いだしましたが、当時の機器では十分な検証ができませんでした。

今回のパーセベランスは、より高度な分析機器を備えており、現場で採取されたコアサンプルに基づく解析が進められています。

該当の岩石はすでに採取されており、当初は将来のサンプルリターン計画で地球に持ち帰り詳細分析を行うことが想定されていました。

しかし、サンプル回収の実行には予算や計画上の不確実性が残されており、最終的な判定は地上ラボでの精密分析が行われてからになるということです。

この発表を受けて世間では、「たとえ古代の痕跡であっても私たちが宇宙で孤独ではないことの表れだ」といった神秘の世界への期待が寄せられる一方で、「結局は資金集めのために大げさに伝えているのではないか」「人間は触れるものを壊してしまう。地球を守ることを学ぶまでは火星に手を出すべきではない」といった懐疑的な見方や環境保護を訴える意見も出ています。

Text by 本間才子