パキスタン反政府デモ、平和的解決の裏事情とは

パキスタン反政府デモ、平和的解決の裏事情とは パキスタンの首都イスラマバードで行われていた反政府デモが収束を迎えたようだ。このデモは、イスラム教説教師のタヒル・カドリ氏が筆頭となり、政治腐敗を指摘し自由で公平な選挙を求めていた。政府は17日、同氏との協議を行い、議会の早期解散などを含む同意書に署名したという。これをもって、4日間に及ぶデモは参加者の歓喜の声が上がる中での解散となった。
 海外各紙は、大きな被害が及ぶ前に解散に至った様子や、その裏で囁かれる別の面などに注目した報道をしている。

【平和的な解決】
 反政府デモにはパキスタン全国から何千人もの支持者が集まり、議会周辺を占拠し首都機能に障害をもたらしていた。フィナンシャル・タイムズ紙によると、最高裁による首相逮捕命令の問題も抱える政府にとって、大きな人的被害にも繋がりうるデモ活動には迅速に対応したい雰囲気が強まっていたという。
 また、カドリ氏の背後には軍部の存在が見え隠れするため、大きく譲歩した模様だ。メディアに配布された資料によると、今回の主な合意事項は下記の通りだ。
  ・5月中旬に実施される総選挙の90日前の議会解散、現政権の退陣
  ・解散から次期政権発足まで選挙管理内閣における暫定的な首相候補は、カドリ氏との協議のもと決定
  ・選挙管理委員会の改革
 カドリ氏が求めていた「現政権の即時退陣」や、「ミリオン・マン・マーチ(百万人のマーチ)」などは実現できなかったものの、反政府活動としては異例の譲歩を得ることができたとしている。同氏は、デモの参加者たちに対して勝利宣言をすると共に、「我々はここに穏やかに集まった。今からは同様に穏やかに解散しよう」と呼びかけたという。参加者たちは自分たちの声が政府に届いたことに喜び、歓喜に湧きながら撤収を開始した。

【穏便解決の裏事情】
 一方ニューヨーク・タイムズ紙は、デモが激しい暴動に発展する前に穏便に収束したものの、カドリ氏が得た権限は限られているとの見解を報じている。 同意書には法的効力はないと指摘した上で、政府の譲歩はカドリ氏の面子を保ちつつ、デモを穏便に撤退させるための段取りに過ぎないと分析するアナリストらも少なくはないようだ。実際に、同意書の最後には、同氏やデモ参加者に対して政府からのおとがめがないように、と記載されているという。
 また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、両者は否定しているものの、軍部とカドリ氏の連携疑惑も色濃く残っている。パキスタンでは、これまでも軍事クーデターにより政治が荒らされてきた。今回も同氏が議会の解散後に軍部が発言権を持つ暫定政権の設立を求めていることから、軍の関与に疑念を抱く人々もでており、その活動については賛否両論のようだという。

 今後は引き続き北西部などで勃発している反政府派による襲撃事件への対応や、月末に延期となったアシュラフ首相の逮捕問題の進展が注目される。

Text by NewSphere 編集部