事前通告を巡りアメリカとカタールが食い違い イスラエルのドーハ攻撃

イスラエルの攻撃によるとされる爆発で上がる煙=9月9日、カタール・ドーハ|UGC via AP

 カタールは10日、前日にエネルギー資源に富む中東のこの国の首都に集まっていたハマスの政治指導部を標的にしたイスラエルの攻撃の瓦礫を、なお掘り起こしていた。会合はガザ地区での停戦に向けたアメリカの提案を検討するためのものだった。

 カタールの地元メディアは、9日の攻撃後に出された政府声明に厳密に沿った報道に終始した。攻撃は、各国大使館や学校が集まるドーハの一角で起き、少なくとも6人が死亡した。カタールは世襲の首長が統治し、他の湾岸アラブ諸国と同様に言論を厳しく制限している。

 アメリカの同盟国の領土で起きたこの攻撃は、中東内外の複数の国から広範な非難を招いた。地域の緊張を劇的にエスカレートさせる出来事でもあり、戦争終結とガザでハマスに拘束された人質の解放を目指す協議を頓挫させかねない状況となった。

 ハマスは9日の声明で、最高幹部は攻撃を生き延びた一方、下級幹部5人が死亡したと発表した。犠牲者には、ガザのハマス指導者で最上級の交渉担当でもあるハリル・アル・ハイヤの息子、護衛3人、アル・ハイヤの事務所責任者が含まれるという。ハマスはしばしば幹部の暗殺を数か月後になって確認してきたが、今回、アル・ハイヤら上級幹部が生存していることの即時の証拠は示していない。

 カタール政府の資金で運営される、歯に衣着せぬ論調の衛星ニュース局アルジャジーラは、見出しでこの攻撃を「残虐な侵略」と表現した。イスラエル政府はイスラエル国内とヨルダン川西岸でのアルジャジーラの活動を禁じているが、同局の記者はガザ地区からの放送を続けている。

 国営カタール通信は、同国の首長タミム・ビン・ハマド・アール・サーニーが、アメリカのドナルド・トランプ大統領を含む各国首脳と相次いで電話協議を行ったと伝えた。

 タミム首長は攻撃を非難し、通話の発表内容によれば、カタールは「その帰結についてイスラエルに責任があると考える。彼らが採用している攻撃的な政策は地域の安定を脅かし、緊張緩和と持続可能な外交的解決に向けた努力を妨げている」と述べた。

 同国の巨大なハマド国際空港を拠点とする大手エアライン、カタール航空は、乗客に対し運航の安全と継続に影響はないと安心を呼びかけた。

 カタールは、アメリカ製のパトリオットや高高度防衛ミサイル(THAAD)システムを含む大規模な防空兵器を保有している。

 しかし、今回の攻撃でカタールの防空網が作動した形跡は、直ちには見られない。

 カタールのモハメド・ビン・アブドゥルラフマン・アール・サーニー首相兼外相は9日夜、「敵のイスラエルはレーダーに探知されない兵器を使用した」と述べた。

 詳細には踏み込まなかったが、この発言は、イスラエル戦闘機がいわゆる「スタンドオフ(遠距離)ミサイル」を用い、カタールの領空に入ることなく、離れた地点から目標を攻撃した可能性を示唆する――発射地点はペルシャ湾上空などが考えられる。

 アメリカは攻撃前にカタールへ警告したと述べている。これに対しカタールは異議を唱え、モハメド首相は「アメリカ側は攻撃発生から10分後にメッセージを送り、カタール国家に対するミサイル攻撃があるとの通報を受けたと伝えてきた」と語った。

 カタールには、アメリカの中東担当である中央軍の前方司令部がある。司令部は広大なアル・ウデイド空軍基地に置かれ、アメリカ運用のレーダーや防衛システムも備える。同基地は5月の地域歴訪の際にトランプ氏を受け入れている。

Text by AP