AI充実 グーグル「ピクセル10」米メディア評価 革新と妥協
Google LLC via AP
グーグルは21日、ピクセル10シリーズを発表した。外観は前世代と大きく変わらないが、人工知能(AI)を全面的に統合した「AIファースト」のスマートフォンとなっている。ラインアップは3モデルで、価格は799ドルから1199ドル(日本向けグーグルストア価格は12万8900円〜19万2900円)だ。
◆本人の声でリアルタイム通訳
注目を集めているのが通話中のリアルタイム音声翻訳だ。米誌ワイアードの記者は、ロシア語が話せないにもかかわらず、友人とロシア語で会話できたという。AIは通話開始時に記者の声の特徴を学習し、それを再現する形で翻訳音声を生成する。同誌によれば、友人は「なんてことだ、これはクレイジーだ!」と驚き、「機械的な翻訳より、少し違和感があっても本人の声の方が良い」と肯定的に受け止めた。対応言語は英語、フランス語、ドイツ語、日本語、スペイン語など9言語。同誌はピクセル10シリーズを総合評価で10点満点中8点とした。
また、必要な情報を適切なタイミングで表示する「Magic Cue(日本名:マジックサジェスト)」機能も注目される。ブルームバーグによると、ホテルに電話をかけた際、Gmailに保存された予約情報が画面に表示されるなど、状況に応じた情報提示が行われたという。主張しすぎず自然に人を支えるAIとして高く評価されている。
◆写真撮影と編集の進化
Pixel 10は写真機能でも大きな変化を打ち出した。
すべてのモデルに5倍光学ズームを搭載。入門機に導入されたのは画期的だ。基本モデルのピクセル10が10.8メガピクセルの望遠レンズで5倍光学ズームに対応している。同価格帯のiPhone 16(2倍ズーム)、Galaxy S25(3倍ズーム)と比べると性能の高さが際立つ。米ニュースサイトの『ギズモード』は総合評価で星4つ(5点満点)を付けた。
さらに、自然言語による写真編集機能も新しい。ブルームバーグの記者は、Google Photosアプリに「眩しさを取り除き、写真を明るくして、背景の邪魔な人を消して」と入力したところ、すべての指示が一括で適用されたと報告している。同誌は「Geminiは、ユーザーが何を求めているのか、誰について話しているのかを理解できるほど賢い」と評価し、被写体をタップしたり削除対象を囲んだりする従来の手間が不要になったと述べている。
◆進化の影で退化したポイントも
一方で、妥協が見られる点もある。
批判を集めているのはカメラのハードウェア構成だ。ギズモードによると、約800ドルのピクセル10には、約500ドルのピクセル9aと同じカメラセンサーが使われている。メインカメラは前世代の50メガピクセルから48メガピクセルに、超広角カメラは48メガピクセルから13メガピクセルに性能が落ちた。
さらに、ワイアード誌はSIMカードスロットが廃止(ピクセル10 Pro Foldを除く)され、eSIM専用となった点についても「物理SIMカードの方が端末間での移行が簡単だ」と不満を示している。
細かな不満は残るものの、徹底してAI活用を前面に押し出すグーグルの姿勢は、競合と比べてもガジェットとしての魅力を一段と高めている。




