変わる子育てのあり方 神経科学で明らかになる発達途上の脳
siro46 / Shutterstock.com
著:Nancy L. Weaver(セントルイス大学、Professor of Behavioral Science)
友人が最近、何気なくこう言った。「誕生日のあと娘を言うことを聞かせるのはとても簡単なんだ。悪いことをしたら取り上げられる新しいおもちゃがたくさんあるからね!」
確かにこうした強力な子育ての裏技には魅力があるが、実際には罰を使った子育てには大きな欠点がある。
過去20年ほどの間に、科学者たちは成長する脳について次々と発見してきた。この神経生物学の探究は、新しいタイプのトラウマ治療や神経系に対するより深い理解、そして環境要因と遺伝要因が相互作用して子供の行動を形作ることへの認識につながった。
科学が次第に実用的になるにつれ、より多くのエビデンスに基づいた戦略が子育てや教育プログラムに取り入れられるようになってきた。研究は、親や養育者が健全な子供の発達を促すために大人側の行動を変える手がかりとして、有用な指針を示している。
実際、旧来の行動理論に基づいた子育てや教育の方法は、多くの場合効果がなく、特に脆弱な子供にとっては最善の方法ではない。
◆なぜ古い手法はうまくいかないのか
私は軽々しくこの見解に至ったわけではない。私は行動科学者であり、公衆衛生の教授でもある。数学と生物統計学の学位を持ち、子供が小さい頃には育児書を読み漁り、ある種アカデミックな戦略で子育てに取り組んだ。著者や小児科医が推奨する従来の方法を固く信じ、子供を部屋に送り込んで自分の選択を考えさせ、結果を厳格に守らせた。
しかし子供が中学、高校の年齢になるにつれて、そうした規律の方法が私たち家族にどんな代償をもたらしていたかに気づき始めた。
親や教育者は長年、20世紀の研究者バラス・スキナーの実験から原理を学んできた。彼は報酬や罰がラットの行動をどう変えるかを研究し、「アメとムチ」という古典的な報酬と規律の戦略を導き出した。簡単に言うと、研究者が望む行動(レバーを押すなど)をとったラットには褒美が与えられ、そうでないラットには弱い電気ショックが与えられた。
20世紀半ばに行われたこうしたラット実験は、アメリカ文化に広がった子育てのアプローチを形作り、すぐに教義のように定着した。幾世代にもわたる親たちが、望ましい行動を強化するためにシール表や小物、おもちゃ、寝る前の追加の読み聞かせといった報酬を用い、望ましくない行動を減らすためにタイムアウトや特権の剥奪といった罰を用いることを学んできた。
だが2000年代初頭以降、多くの著名な著者が、こうした戦略は効果が乏しいばかりか有害である可能性さえあると唱え始めた。
◆子供の行動の神経科学
人は皆、安全が脅かされると「闘争か逃走か」の反応を準備する神経系の仕組みを持っている。危険を感じると心拍数が上がり、手のひらに汗をかき、注意が狭まる。このとき合理的判断をつかさどる前頭前皮質は一時停止し、身体は脅威に備える。脅威反応がおさまって初めて前頭前皮質が再び働き、冷静に考えることができる。これは特に子供に当てはまる。
大人はある程度、神経系の状態を調整する力を身につけているが、子供は未熟な神経系と未発達の前頭前皮質しか持たない。例えば、キックボールのゲームから仲間外れにされた怖さを処理できず、友達をおもちゃのトラックで叩いてしまうことがある。理屈ではわかっていても、脅威に直面すると「闘う」反応が優先され、前頭前皮質が「オンラインに戻る」までには時間がかかる。子供はまだ自分の必要を言葉にできないため、大人が行動を通じてそのニーズを読み取る必要がある。
落ち着いた大人と神経系を同調させることで、子供は平静を取り戻し、その後で学びを処理できる。ストレス下で罰やタイムアウトによって行動を変えようとするのは、情動調整を学ぶ機会を逃すだけでなく、苦痛を長引かせることが多い。
行動主義的モデルは、子供には十分には機能しない。発達中の脳への理解が進んだ今では、かんしゃくや「おもちゃを奪う」といった行動に罰を与えるのは、心停止の人に砂糖を控えろと説くのと同じくらい無意味であるとわかる。
◆好奇心こそがつながりの鍵
科学者や育児の専門家は、脳科学が子育てにどう役立つかについて、大きく理解を深めてきた。
研究者が最も効果的な子育てスタイルについて必ずしも一致しているわけではないが、子供の感情や行動、反応や選択に好奇心を持つことが、ストレスの多い場面での親の対応を導く助けになる点では概ね意見が一致している。子供がなぜ算数の宿題を終えられなかったのか、なぜ幼児が従兄弟に砂を投げたのか、その理由をより深く理解することが、真の学びにつながる。
子供の神経系の反応を理解し、彼らと「同調」することで、子供は安心感を得ることができる。その安心感が、親からのフィードバックを吸収できるようにする。このようなつながりを感じ、スキルを身につけた子供は、おもちゃのトラックを投げるような行動を起こしにくくなる。
例えばスーパーのレジでお菓子を欲しがってぐずったとき、公園に行く約束を取り消す代わりに、次のようにしてみてほしい。
- 落ち着くこと。深呼吸と一時停止は、自分の神経系を落ち着け、子供と同調できるようにする。
- そばにいること。近くにいることで子供は支えを感じ、難しい感情を乗り越えられる。経験を認めるだけでも気持ちを落ち着ける助けになる。
- 境界を守ること。お菓子を買わないことで、子供は怒りや失望といった感情を「苦痛耐性」として扱う練習を、親の支えとともにできる。
- 状況を振り返ること。落ち着いたあとでその体験について話し合い、背景を確認する。子供がお腹を空かせていたのか、疲れていたのか、それとも一日の出来事で嫌なことがあったのか。
子供の発達する脳の理解を踏まえた子育ては、行動を整えるのにずっと効果的であり、感情的な成長や強い親子関係を促進する。それは非常に大きな保護効果をもたらす。
そしてそれは、誕生日プレゼントを取り上げるよりもはるかに気持ちのよい方法である。
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by NewSphere newsroom
![]()




