科学が示す 園芸の意外な効用 土いじりで癒やされる心身

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 園芸をしたことがある人なら、持ち上げたり汗をかいたり力を入れたりする作業があるにもかかわらず「気持ちがいい」と感じる意味がわかるだろう。運動が体に良いのは言うまでもないが、鳥の声を聞きながら土を掘ることには、気分を高める特別な力がある。土やマルチの匂いでさえ幸福感をもたらす。

 実際、これには科学的な理由がある。

 カリフォルニア州ロングビーチのUCLAエクステンションで園芸療法を教えるカレン・ヘイニー氏によれば、「園芸療法」と呼ばれる分野があり、「治療を必要とする人々を支えるために植物や園芸活動を用いる」ことに特化しているという。

 アイダホ州ボイジーの園芸療法士、サラ・トンプソン氏は「研究によれば、週に数回20〜30分の園芸でストレス軽減や気分改善が期待でき、定期的に続けるほど効果は高まる」と述べる。

◆単なる屋外活動ではない
 自然の中にいるだけでも気分が改善され集中力が回復するが、「植物を育て、意思決定を行い、時間をかけて成果を見るという能動的な関わりは、ただ屋外にいるだけでは得られない特別な意味と満足感を加える」とトンプソン氏は語る。

 さらに、園芸は不安やうつの症状を和らげ、落ち着きや目的意識、達成感を育むことが示されている。

 このことはコロラド大学ボルダー校の最新研究でも裏付けられている。研究者たちは一方のグループに園芸講座、種子、苗、共同菜園を用意し、もう一方のグループには2年間園芸を控えてもらった。

 園芸をしたグループは、社会的つながりの強化、ストレスの低下、食物繊維摂取量の約7%増加を報告した。これらはうつや高血圧、2型糖尿病、がんなどのリスクを減らすことが知られている。また、園芸者は週あたり42分の身体活動の増加を報告したが、園芸をしなかったグループには見られなかった。

◆心を落ち着け、達成感を与え、幅広く展開できる活動
 過去の研究も同様の結果を示している。たとえば2020年、イギリスのエクセター大学と王立園芸協会の研究では、園芸をする人の健康や幸福度は、園芸をしない人と比べ、豊かな地域に住む人と貧しい地域に住む人の差に匹敵するほど高いことがわかった。

 トンプソン氏によれば、園芸は現在に意識を集中させ、達成感を与えるだけでなく、「日光を浴びることでセロトニンが増え、土との接触によって気分を高める微生物が取り込まれることも研究で示されている」という。

 つまり、園芸はやって損はないのだ。

 「身体的には、園芸は筋力、柔軟性、バランスを改善する。社会的には人とのつながりを育む。認知的には問題解決や創造性を刺激する」とトンプソン氏は述べる。そして「園芸はあらゆる空間、能力、年齢に合わせて調整でき、その恩恵は誰にでも開かれている」と加えた。

 園芸をする者は心の奥底でこのことを信じてきた。そしていま、科学がその正しさを証明している。

By JESSICA DAMIANO

Text by AP