アフリカ連合、メルカトル図法から「正しい地図」への移行を後押し
イコール・アース図法による世界地図(自然地形図)|Equal Earth公式サイト
アフリカ連合(AU)が「アフリカの本当のサイズ」を示す地図の普及を後押しした。16世紀後半に開発されたメルカトル図法は、ヨーロッパや北米を相対的に大きく、アフリカや南米を小さく見せる。AUはこの歪みが教育や政策判断に及ぼす影響を問題視し、イコール・アース(Equal Earth)図法への切り替えを進める。地理的な認識の是正には、グローバルサウスの過小評価に抗い、アフリカのあるべきプレゼンスを回復するという政治的な意義がある。
◆「正しい地図」への移行の動き、AUが正式に後押し
AU委員会のセリマ・マリカ・ハダディ(Selma Malika Haddadi )副議長は、ロイター通信の取材に対し、世界で2番目に広大な面積を持ち、10億人以上が暮らす大陸であるにもかかわらず、メルカトル図法がアフリカを「周縁的な存在」とする誤った印象を助長してきたと指摘。
AUは「Correct The Map(「地図を正そう」という意味)」キャンペーンを主導する団体、アフリカ・ノー・フィルターとスピーク・アップ・アフリカ、さらにAU加盟各国と連携し、国際機関などにおけるイコール・アース図法の採用を広げる方針。
カリブ共同体(CARICOM)賠償委員会の副議長であるドルブレン・オマード(Dorbrene O’Marde)氏も、メルカトル図法が体現してきた「権力と支配のイデオロギー」を拒絶するものとして、イコール・アースを支持した。
2018年に考案されたイコール・アース図法は、面積を正しく保つ等積投影で、国・大陸の相対的な大きさをより公平に表す。アメリカ航空宇宙局(NASA)はこの地図をいち早く採用。世界銀行はメルカトル図法の使用を段階的に減らし、統計資料や教育用の地図でイコール・アース図法やウィンケル図法(面積と角度の歪みを低減する図法)への切り替えを進めている。一方、グーグルは、2018年にデスクトップ版の地図を地球儀表示へ移行した(モバイル版はメルカトル図法)。
キャンペーンは国連の地理空間情報機関(UN-GGIM)にも是正を要請しているという。Correct The Mapのサイトでは、キャンペーンに署名し、イコール・アース図法の地図をダウンロードすることができる。
◆アフリカを「過小評価」する地図
1569年にフランドルの地図製作者ゲラルドゥス・メルカトルによって発表されたこの投影法は、弧を描く架空の航路を直線として表現できる初期の手法のひとつで、航海上の利便性により当時大きな人気を博した。地形や角度を保つという点に関しては、航路や進路のナビゲーションに適しているが、縮尺が不正確なため、世界地図として拡大すると問題が生じると専門家は指摘する(アルジャジーラ)。たとえば、メルカトル図法の地図では、グリーンランドとアフリカ大陸がほぼ同等の大きさであるかのように描かれているが、実際は、アフリカの面積はグリーンランドの約14倍あり、アメリカ、中国、インド、日本、さらに欧州連合(EU)加盟国を合わせた領域よりも広い。
メルカトル図法の地図が現在も使われ続けていることは、政治的な課題を帯びている。Correct The Map運動の推進者は、これは「権力と認識」の問題であり、「グローバルサウスに対して間違った優越性を植え付けるものだ」と主張。AU委員会のハダディ副議長は、AUのキャンペーン後押しは、「アフリカが世界の舞台で本来あるべき地位を取り戻す」というAUの目標にも合致していると述べた。
キャンペーンを推進するアフリカ・ノー・フィルターは、アフリカの教育現場におけるイコール・アース地図の採用に関しても力を入れてきた。同団体のアビムボラ・オグンダイロ(Abimbola Ogundairo)によれば、その背景にはアフリカ人が変革の中心となり、自分たちの伝えたい物語を語るべきであるという考えがある。だからこそ、AUやAU加盟国の積極的な働きかけが今後も重要な意味を持つことになる。




