世界にトビタテ!女子大生がフィンランドと台湾で見つけた「女性が活躍できる社会のあり方」

 

 国家プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」の取り組み(制度についてのインタビュー:前編後編)を活用して、実際に世界に飛び立った学生はどのような経験をしているのか紹介したい。今回は、「女性が活躍できる社会のあり方」をテーマにフィンランドと台湾に留学した、お茶の水女子大学生活科学部4年生の青木優さんの話を聞いた。

 青木さんは大学入学後、女子大学という環境も影響したのだろうか、仕事と子育ての両立という女性のキャリアについて周りの皆が抱える漠然とした不安について課題を感じ始めたという。

 そんな中、『男女平等国家フィンランド』というキャッチコピーに出会った。青木さんの周りには、海外留学をする同級生も多く、留学することが自然と選択肢に入っており、女性のライフキャリアをテーマにフィンランドへの留学を決めた。また、北欧と日本の比較だけでは日本の課題への対策を考えるのは難しいと考え、他地域とも比較するべく、中国語を学習したこともあり台湾への留学も決めた。

◆男女平等国家フィンランド
 前半のフィンランドへの留学では、タンぺレ大学で社会学系の講義を受講しながら、保育所や社会福祉施設の訪問、女子大生や働く子育て女性たちへのインタビュー調査などのフィールドワークを行なった。

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インタビューに応じてくれたフィンランド人の家族

 活動を通して気付いたフィンランドの社会の良さは、充実した社会制度自体というより、制度を利用する人々の考え方だったという。個々の選択を尊重する社会の雰囲気こそが、フィンランドの人々の心を支え、仕事と家族どちらも含めた豊かな生活を成り立たせているのではないかと考えるようになった。

◆制度に頼らず活躍する、パワフルな台湾女性たち
 留学後半の5ヶ月間で訪れた台湾は、決して制度が整っているとは言えないという。しかし、台湾の女性は経済的自立への意欲と、子育てを人に頼る力で制度の不備を乗り越えている。平均収入がそれほど高くない台湾では、男女かかわらず働き続けなければ生活が苦しい。そのため、女性には養ってもらうという概念があまりない。子育て中も仕事を続けていくには、誰かの手を借りる必要があるのだ。

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豊かすぎない暮らしの中に、助け合いのあたたかさを教えてくれた台湾人の家族

子育てを自分の力だけでやりきり、専念してあげることが善ではなく、親戚や地域のいろんな人との交流と思って周りのコミュニティにも頼り、時には遠くに住む祖父母に子供を預けてでも、将来的に家族が幸せでいられるように、母も父も経済力をつける。そうして幼少期を育てられた今の大学生たちが、特に小さいころ寂しい思いをしたこともないと答えるのも、印象的だったという。血のつながりだけが家族なのではなく、周りの人と家族のように助け合って生きることが、台湾の子育て家庭を支えているのだと知った。

◆留学後の挑戦
 2カ国への留学経験で、青木さんは「個を尊重する価値観」と「子育て家庭と社会のつながり」を日本の社会に根付かせたいという思いを強くし、帰国後の挑戦のテーマとなった。その挑戦として、若者のための家庭版OBOG訪問の「家族留学」を促進する事業に携わっている。

 家族留学とは、「結婚して、子どもも欲しいけれど、仕事でも活躍したい・・・」「自分の母は専業主婦だから、仕事をしながらの子育てはイメージできない」「子育てって実際どういう感じなの?」と疑問を持っている若者を対象に、一日子育て家庭に「留学」し、親と交流し、育児体験を通して自らのライフキャリアの選択や悩みのヒントを得る事業だ。

 慣れない異国に飛び込み、言葉や文化の違いを乗り越える留学は、それ自体が挑戦であるだろう。しかし、その留学が新たな挑戦を見つける機会にもなる。そういう留学が出来たならば、その留学は大成功といえるだろう。

Text by NewSphere 編集部