まだ新種が? DNA解析で確認された華やかな蛾

画像はイメージ(Jeffrey Rowland / Flickr

オーストリア・インスブルックのチロル州立博物館フェルディナンデウムに所属する昆虫学者ペーター・フーマー博士が、地中海東部に生息する新種のガを確認しました。

【画像】ピンクと黄色の斑点が特徴 地中海に潜んでいた新種ガを研究者が発表

成果は国際学術誌『Alpine Entomology』などに掲載されています。

新種のガを発見

研究では、これまでヨーロッパ全域で広く知られていた「カシノキカクマガ(Carcina quercana)」とされていた個体群の中に、実際には遺伝的に独立した新種が存在することが明らかになりました。

DNAバーコーディングによる解析で6%以上の差異が認められ、さらに生殖器の形態比較によっても別種であることが裏付けられました。

新種は「カルシナ・イングリッドマリアエ(Carcina ingridmariae)」と命名されました。

体長は約2cmで、ピンク色を基調に黄色の斑点を持ち、長い触角が特徴です。

従来のカシノキカクマガと酷似するものの、詳細な観察と遺伝子解析により、両者は明確に区別できることが示されました。

このガはクロアチア、ギリシャ、キプロス、トルコにかけて分布しているとされ、幼虫はカシ類を食草とする可能性が高いとみられています。

学術的には、ヨーロッパのチョウ目(ガやチョウ)はすでに網羅的に研究されていると考えられてきましたが、今回の成果は「色鮮やかな種でも未記載の多様性が潜んでいる」ことを示す例となりました。

フーマー博士はこれまでに200種以上を記載していますが、本種について「科学者としての長い経歴の中で最も美しい種だ」と語り、この発見を自身の42回目の結婚記念日にちなみ、長年支えてくれた妻イングリッド・マリアさんに捧げたとしています。

Text by 本間才子