民主党に接近するトランプ大統領 共和党は不快感「必ず二日酔いが来る」
【ワシントン・AP通信】 連邦議会内の共和党のリーダーたちにいら立ちを感じているドナルド・トランプ大統領は7日、唐突に民主党員との親密な関係について声高に語った。新たな国家予算の取り決めの見通しを掲げ、さらには民主党員からの強い要請を受けてツイートしたのだ。
これまでとは異なる民主党との新たな関係について、トランプ大統領は「これは我々の国にとって素晴らしいことだと考えている」と語った。
共和党のリーダーたちはこの大きな転換点ともなる出来事について、公の場では体裁を取り繕っていたが、両党の立法府の議員たちは、トランプ大統領のこのアプローチが今後の国政に影響を与えるのではないかとひそかに懸念を抱いていた。トランプ大統領は6日、共和党のリーダーたちの反発を押し切り国債の上限額を3ヶ月間だけ引き上げるという協定を取り決めたが、保守的な党員の何人かはこの策略的かつ発想が自由すぎる大統領を公に批判している。
このトランプ大統領の新しい協力体制がいつまで持つか、とひそかに不信感を抱いている民主党員たちは、公の場では楽観的な態度を見せていた。
立て続けに法案の議会通過に失敗したトランプ大統領は、その後何ヶ月もの間、ミッチ・マコーネル上院多数党院内総務とポール・ライアン下院議長に対する不満を漏らしていた。7日、大統領は両党の協力による今後の体制強化について、また民主党員とは協働する準備ができていることを明らかにした。
大統領は、「これこそアメリカ国民が望んでいることではないかと考えている。つまり、両党が対話し、少なくともある程度の一体感を持つことだ」と、レポーターに語った。
自身も長年民主派であり、民主党が優勢なニューヨーク市で人生のほとんどを過ごしてきたトランプ大統領は、これまで一度も共和党を強く支持したことはなかった。また、法案を通すためには常に姿勢を変える意思を示しているが、最近になって民主党へ好意的な態度を見せているのは驚くべきことだ。
トランプ大統領は債務上限引き上げの合意にあたって、共和党のリーダーや財務長官からの異議を棄却した。また、民主党の上院議員に対し、彼女が出身州に帰る時にエアフォースワンに乗せてあげるなどをして彼女の機嫌を取ろうとした。また、7日にはナンシー・ペローシ下院少数党院内総務の要請のもと、若年層の移民に対する公約を見直し、この先6ヶ月間は連邦政府プログラムによって運用されることを約束し、「何も心配する必要はない」とツイートした。
また、債務上限に関する票を永久に破棄し、若年層の移民たちに関しては独立した政策を設けることに意欲を示しているが、この2つの提案は多くの共和党員からの反発を受けた。
共和党のリーダーに対するトランプ大統領の不満は、月日とともに大きくなっている。
彼は、オバマ大統領のヘルスケア関連法案を撤回する法案を通すことができず、また遂行中のロシアの調査において彼を十分サポートできていないとして、マコーネル上院多数党院内総務とライアン下院議長の両氏を激しく批判した。
そして連邦議会が夏期休暇を終えたばかりの6日、大統領執務室で行われた 18ヶ月間の債務上限の引き上げの期間延長に関する会談で、延長期間を12ヵ月に、または6ヵ月に短縮するという共和党員の提案を払いのけた。スティーブ・マヌーチン財務長官が期間延長を支持する経済論を主張し続けた時には、話を途中で遮った。
そのかわりに、トランプ大統領はチャールズ・シューマー上院少数党院内総務とペローシ下院少数党院内総務の側につき、その後彼らを「チャックとナンシー」と呼ぶようになった。この親密感は、トランプ大統領の顔を指差しているシューマー上院少数党院内総務と、彼の腕を握って笑う大統領が執務室の窓越しに写っている写真で浮き彫りになった。
ペローシ下院少数党院内総務は、シューマー上院少数党院内総務は「大統領と同じニューヨーカーとして、より近い目線で話すことができる」と語った。
ミック・マルバニー行政管理予算局長は、大統領が共和党のリーダーたちに対して腹を立てているのかと聞かれると、「おそらくそうだ」と答えた。
「共和党員としても、そして一市民としても、大統領と同じく腹を立てているということは信じてほしい。現時点でオバマケアは撤廃されているはずだったのだが」と、マルバニー行政管理予算局長はフォックス・ビジネス・ネットワークに語った。
ライアン下院議長はこの緊迫した状態を楽観視しており、トランプ大統領が民主党とともに支出や国債、そしてハリケーン・ハービー救済に関わる協定を結んだことは、国の2つの主要な問題に対応できているという点で意味があることだった、と語った。
対応の最中に党派の争いが起こることを大統領は望んではいない、とライアン下院議長は語った。
ライアン下院議長がその回答中に顔をしかめた反面、民主党員であるペローシ下院少数党院内総務は、取り決めで定められた6ヶ月の期間中は、若年層の移民は本国送還の対象とはならない、とトランプ大統領が7日にツイートしたのは、彼女からの要請による行動だった、とレポーターに語った。先週になって政府は、連邦議会に6ヶ月間の猶予を与えつつも、これはDACA(幼少期に米国に到着した移民への延期措置)プログラムを撤廃するものである、と発表した。
7日、トランプ大統領はマコーネル上院多数党院内総務、ライアン下院議長、シューマー上院少数党院内総務と電話で会談している。そして今回、シューマー上院少数党院内総務は、ニューヨークとニュージャージーの間を繋ぐ鉄道の建設における連邦政府の関与の可能性について話し合うため、大統領と再会した。
「大統領は、アメリカ国民にとって最良の政策に必要なことを、党派を超えて取り組むことに全てを捧げている」と、サラ・ハッカビー・サンダース首席報道官は語った。
その後トランプ大統領は、ホワイトハウスでのライアン下院議長との会食で、この秋の立法議案について話し合った。その会食のあとホワイトハウスは、トランプ大統領が「二大政党の連携の実現に向けて連邦議会と協議する」ことに意欲を示していると言明した。
トランプ大統領は、二大政党の連携強化を進めることに対して肯定的な新聞記事があることを喜んでいると関係者に明かし、それをペローシ下院少数党院内総務とシューマー上院少数党院内総務との電話で自慢げに話している。だが、共和党の全員がそれを喜んでいるとは到底言い難い。
「昨日、我々はワシントンに溜まったヘドロ(汚職)が増え続けていることを確認した。チャック・シューマー上院少数党内総務は、12月の土壇場で民主党予算にとって都合が良くなるように、ハリケーン救済を人質にしてしたたかに水面下で動いている」とネブラスカ州のベン・サッセ上院議員は語った。
テキサス州のビル・フローリーズ共和党下院議員は、トランプ大統領は民主党のリーダーたちと協力したことを後悔する時が来るだろう、と示唆した。
「今はいい気になっているのかもしれないが、次の日には必ず二日酔いが来るものだ」と、彼は語った。
そして上院において共和党の第二のリーダーであるテキサス州のジョン・コーニン上院議員は、トランプ大統領の政党を分断するような今週の行動は、2018年の選挙活動に影響を与えるだろう、と水を差した。
「彼は計算高い」と、コーニン上院議員は語る。「そして、民主党員を引き入れて我々を少数派にするというよりは、党からの反対を押し切ってでも、ジェフ・フレイク(アリゾナ州の共和党上院議員)を身近に置いておきたいのではないだろうか」。
By JONATHAN LEMIRE and ERICA WERNER
Translated by Conyac