米自動車誌が検証 待望のフォレスター・ハイブリッド、その進化と課題
Subaru of America, Inc.
スバルは、2025年型フォレスターにおいて、アメリカ市場向けに同社初の「フォレスター・ハイブリッド」を正式に導入した。トヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」など競合他社はすでにハイブリッド版を展開しており、スバルもコンパクトSUVでついに電動化へ舵を切った格好だ。アメリカの自動車メディアからは早くも好意的な評価が寄せられている。
◆静粛性が大幅向上 「エンジン音にほぼ気づかない」
新型フォレスター・ハイブリッドは、静音性が大きく進化した。米カー・アンド・ドライバー誌による測定では、時速113キロ巡航時の車内騒音が68デシベルと、ガソリン車の70デシベルから2デシベル低減。
エンジンとモーターの切り替えも極めて滑らかで、「運転中のバックグラウンドノイズにほとんど変化がなく、エンジンのオン・オフを感じさせない」と同誌は評価している。遮音材の追加も施され、上質な乗り心地を実現した。
米モータートレンド誌も「非常に静か」と評し、「従来のスバル車に抱いていた、排気音が鈍く空冷式VWビートル特有のフラット4気筒エンジン音とは完全に無縁だった」と驚きを示した。
◆電動化による力強い発進性能
システム最高出力は194馬力と、標準モデル(180馬力)からの向上幅は14馬力にとどまる。しかも、ハイブリッド仕様はパワートレーンの追加重量により、テスト車はガソリンモデル比で約127キロ重くなっている。このためパワーウェイトレシオではほぼ互角となり、直線加速で大きな優位は生まれにくい。
それでも、電動モーターによる199ポンドフィートのトルクが低速域で力強い加速を生み出す。カー・アンド・ドライバー誌は「停止状態からの発進時、フォレスター・ハイブリッドははるかに力強い加速を見せる」と評価。実測では、ガソリンモデルに比べて時速32キロ、48キロ、64キロまでの加速がそれぞれ0.4秒、0.6秒、0.5秒短縮された。追い越し加速も向上しており、時速48キロから80キロまでは0.2秒、時速80キロから113キロまでは0.7秒短縮され、特に高速域での加速改善が際立っている。
一方、米オートブログ誌のレビューでは、オンロードでの加速や静粛性に加え、アウトドアや日常使いにおける実用性を詳しく評価している。評者は「X-MODEを使えば、滑りやすい路面や岩場などでもほとんどの判断を車に任せられた」とし、十分な最低地上高により悪路走破性も高いと指摘。加えて、オールシーズンタイヤでも険しい区間を難なく走破し、その多くをEVモードでこなしたことで「燃料は帰路に温存できた」としている。
また、アウトバックよりも車高が高く、荷室開口部が広いため「トランクへの荷物の積み込みや積み重ねが容易になった」と述べ、日常の買い物からキャンプ用品の積載まで幅広く対応できる使い勝手の良さを強調。長距離ドライブやオフロード走行でも乗り心地は滑らかで、家族連れのキャンプや長距離移動にも適しているとまとめている。
◆燃費性能に残る課題
もっとも、ハイブリッド化による最大の期待である燃費性能は、依然として競合に後れを取る。EPA複合燃費は35mpg(約14.9km/L)にとどまり、モータートレンドは「このクラスのリーダーはトヨタRAV4(39mpg、約16.6km/L)とフォード・エスケープ(39mpg、約16.6km/L)だ」と指摘。両車と比べると、4mpg(約1.7km/L)の差があるのが実情だ。
背景には、スバル独自の機械式フルタイムAWDシステムがある。オートブログは「オンデマンド式ではなく、真のフルタイム機械式AWDを採用している」と説明し、「より頑丈な選択肢」と評価。その一方で「燃費が悪化することも意味する」と付け加えている。
走破性の高さと引き換えに燃費を犠牲にした格好だが、悪路走行性能や市街地での静粛性は大きく向上しており、その進化は明確だ。




