深海9500メートル、極限環境にチューブワームなど生息 潜水艇で発見

海溝のチューブワーム|Institute of Deep-sea Science and Engineering, Chinese Academy of Sciences via AP

 深海探査によって、海底の深海海溝に生息する生物群が明らかになった。

 このような極限環境では、圧倒的な水圧、乏しい食糧、そして太陽光のない状態が生存を困難にする。科学者たちは微生物がこうした場所でも繁栄していることを知っているが、より大型の海洋生物に関する証拠はあまり知られていなかった。

 北西太平洋の千島・カムチャッカ海溝とアリューシャン海溝を調査していた研究者たちは、有人潜水艇を使って、水深約9.5キロメートル地点でチューブワームや軟体動物が繁栄しているのを発見した。海の最深部は約11キロメートルに達する。

 過去にもこの地域は調査されていて、大型の生物が生息している可能性は示唆されていた。今回の発見はその疑いを裏付け、そこに存在する生態系がいかに広範囲にわたるかを示した、とウッズホール海洋研究所の深海微生物学者ジュリー・ヒューバーは語った。

 「見て、あんなにたくさんいて、しかもあんな深い場所にいるんだ」と、今回の研究に関与していないヒューバーは言った。「全部同じ姿をしているわけじゃないし、これまでうまくアクセスできなかった場所にいるんだ」

 この研究結果は、7月30日に科学誌ネイチャーに掲載された。

 光が届かず自ら食物を作り出すことができないため、多くの深海生物は海の上層から少しずつ落ちてくる炭素などの重要な元素に依存して生きている。

 だが、今回見つかった新たな生物群では、微生物が長い時間をかけて海溝に蓄積された炭素を利用し、それを分解して海底の割れ目から化学物質として染み出させていると科学者たちは考えている。チューブワームや軟体動物は、そうした微生物を直接食べるか、共生してその生成物を栄養源にしている可能性があるという。

 今回の発見を受けて、今後の研究では、これらの深海生物が極限環境にどう適応したのか、そしてどのように化学反応を使って食物を得ているのかに焦点を当てていく予定だと、中国科学院の杜孟然(Mengran Du)とロシア科学アカデミーのウラジーミル・モルドゥホヴィチ(Vladimir Mordukhovich)は共同声明で述べた。

 彼らの存在は、「極限の深さにおける生命の可能性についての長年の前提に挑戦している」と研究者たちは語っている。

By ADITHI RAMAKRISHNAN

Text by AP