PFOAを5分で99%除去 米大学、光で検知も可能な新素材開発

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 米ユタ大学工学部の研究チームが、有害な「永遠の化学物質」を極めて短時間で除去しつつ、その存在を光によって可視化できる革新的な材料を開発したと発表した。プレスリリースによると、開発されたのは「UiO‑66‑N(CH₃)₃⁺」と呼ばれる金属有機構造体(MOF)で、PFASの一種であるPFOAを対象に、わずか5分間で99%以上を除去する能力を示したという。

 PFAS(有機フッ素化合物の総称)は、テフロン加工、防汚剤、難燃剤などに広く用いられてきたが、環境中で分解されず、水や人体に蓄積することから「永遠の化学物質」と呼ばれ、各国で厳格な規制が進められている。

 ユタ大学のMOFは、PFOAを分子レベルで吸着する際、内部に埋め込まれた色素分子が解放される仕組みを持ち、これによって「光ることで」汚染を検出するというセンサー機能も併せ持つ。これは「ターンオン型蛍光センサー」と呼ばれ、PFOAの存在を視覚的に確認できる点が特徴だ。

 このMOFは、炭素とジルコニウムで構成された多孔質構造をベースに、トリメチルアンモニウム(N(CH₃)₃⁺)基を後から化学的に導入することで、PFOAとの静電的な結合力を高めている。この「ポスト合成修飾(post-synthetic modification)」の技術により、従来のMOFよりも格段に高い選択性と吸着能力を獲得したという。

 論文の筆頭著者であるポスドク研究員、ラナ・ダラパティ氏は、「このMOFはPFAS除去技術における飛躍的な進歩を示しています」と述べたうえで、「PFOAを選択的に捕捉し、リアルタイムで高感度に検知できるこの素材は、水処理や環境モニタリングの両方にとって、汎用性と実用性を兼ね備えた解決策となり得ます」と語っている。

 本研究は、環境汚染物質の高効率な除去と同時検出という二つの課題に対し、材料設計の観点から実用的な解決策を提示した点に大きな意義がある。リン・ザング教授(材料科学工学)率いる研究チームは、これまでの水処理材料が抱えていた選択性や応答性の限界に対し、汎用性の高いMOFによる統合的なアプローチが可能であることを示した。

 研究成果は、王立化学会の学術誌『Journal of Materials Chemistry C』に掲載された。研究資金はミシガン州の企業ジェンテックスから提供されており、ザング教授は同社の取締役も務めている。

 PFAS汚染は今や世界中の水源や環境に広がっており、各国で何億人もの人々が知らぬ間にその影響を受けていると懸念されている。今回の開発は、既存の活性炭処理や逆浸透膜とは異なる「スマート素材」による解決策として注目されており、今後の応用展開が期待される。

Text by 白石千尋