米国が中国をWTOに提訴 自動車業界不当支援で

米国が中国を自動車・部品輸出の不当な補助金のため、WTOに提訴した。米国は、補助金は少なくとも10億ドルに達すると主張している。オバマ米大統領は、選挙運動で訪れたオハイオ州での演説にてこの対処を発表した。なお、同州は自動車産業に従事する人が多く、また大統領選の激戦区とされている。

<各紙の報道>

FTは、米国大統領選に関連付け、オバマ、ロムニー両氏の主張に焦点を当てた。ロムニー氏については、過去30年間近くにわたるオハイオ・近隣州の自動車産業の落ち込み、中国等への生産基盤移転に対策をしていなかった点でオバマ大統領を批判したと報じた。一方オバマ大統領は、大手自動車会社GMの救済により産業を復興するなどの成果を主張していると報じた。今回の提訴をオバマ大統領の選挙戦略とみる意見や、政府の貿易への過剰な関与を非難する声などを掲載しており、やや批判的な切り口の記事といえる。

IHTは、この提訴に関する米国自動車産業の内情と中国に対する見解を詳しく報道した。まず、オハイオ州の工場閉鎖・雇用率の低下と、中国からの部品輸入の増加は相関しているという専門家の分析を紹介した。提訴の結果次第で自動車産業の雇用回復の鍵となると大統領は主張する一方、改善には時間がかかるだろうと報じた。確かにこの問題は米国自動車産業にとって大きな影響を与えるが、大統領選を間近に控えたタイミングでの突然の発表を、ロムニー氏は強く非難していると報じた。

WSJは、背景にある世界の自動車産業の変遷にも注目した。大統領は、この提訴の結果次第でアメリカ国民に77万人以上の雇用を生み出せると主張していると報じた。ただし、中国車の売り上げはブラジルなどで伸びていると指摘した。低価格を武器に新興国市場を開拓する中国車や日本車に対し、米国の自動車企業はどう戦うべきか、課題を提起している。

Text by NewSphere 編集部