犬はテレビを観ている 性格ごとに異なる番組の好み 研究

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 海外で「犬向けテレビ番組」が登場するなか、家庭犬がテレビとどう関わっているのかを科学的に調べたユニークな研究が、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。米オーバーン大学などの研究チームは、犬の性格がテレビへの反応に影響していると報告。犬はテレビを「ただの画面」ではなく、現実のように認識している可能性があるという。

◆1日平均14分、「画面を追う」犬も
 研究チームは、アメリカを中心に650人の飼い主をオンライン調査により匿名で募集し、最終的に453匹の犬のデータを分析。年齢は生後2か月~16歳にわたり、犬種も多様で、約3分の1は雑種だった。視聴時間や反応の種類など、飼い主の報告に基づいて「テレビ視聴スケール」を独自に構築し、視聴傾向を評価した。

 その結果、調査対象の88.3%がテレビを観るとされ、平均視聴時間は14分8秒に及んだ。特に画面内の動きを目で追う「追視」行動は、活発な犬に顕著に見られた。研究チームは「犬はテレビ画面の2次元映像を、現実の3次元物体として知覚している可能性がある」と指摘している。

◆性格と好みが連動? 物音には不安傾向の犬が反応
 視聴傾向には性格の違いも関係していた。研究によると、活発で興奮しやすい犬ほど画面内の物体を頻繁に目で追い、逆に不安傾向のある犬は車やチャイムなど非動物的な刺激音に強く反応する傾向があった。

 また、画面に現れる動物には犬の多くが敏感に反応し、全体の45%(206匹)は犬の鳴き声などに毎回反応していた。

◆視聴行動は3つのスタイルに分類可能
 研究チームは調査項目に統計解析を加え、犬の視聴行動を3つのタイプに分類した。
・動物刺激型:犬・猫などの鳴き声や映像に反応
・追跡型:画面上の物体を目で追う行動
・非動物刺激型:車やチャイムなど非生物刺激に対する反応

 この3タイプで、全体の63.7%の行動傾向を説明できるという。特に「動物刺激型」は正規分布で広く見られ、「追跡型」は反応のばらつきが大きく、「非動物刺激型」は反応が少数派だった。

◆「犬専用チャンネル」時代
 研究は調査に基づくものであり、テレビに慣れていない犬を含めた一般化は難しいとしながらも、「テレビとの関わりは、犬にとって刺激的で意味のある体験となり得る」と研究チームは結論づけている。

 アメリカでは近年、犬のための音声や映像を流す「DOGTV」のような専門チャンネルが登場し、SNS上でも「愛犬が夢中で観ている」といった投稿が増えている。一方、日本ではそうした動物向け番組の展開はまだ見られず、今後の番組制作やペット向けメディア設計への応用も期待される。

Text by 白石千尋