芝刈り“ヒツジ”のレンタル始めます! 仏ホームセンターのエコサービス

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 フランスのホームセンター企業最大手ルロワ・メルランが、新たな芝刈りサービス「べええプラン」の提供を始め、話題となっている。これは、芝刈り機の代わりに、羊あるいは山羊を貸し出すというものだ。

◆全国200カ所以上の拠点に2000頭以上の羊が待機
 このサービスは、グリーンシープ社との提携で実現した。2016年に立ち上げられたスタートアップ、グリーンシープは、緑地帯のエコロジカルな手入れを専門とする。同社には130人余りの羊飼いと、約2000匹の羊たちが登録されており、顧客のニーズや気候にふさわしい羊を選んで貸し出す仕組みとなっている。レンタル中の羊たちの生活環境や健康状態は、羊飼いが定期的に確認する。(ル・フィガロ紙、7/3)

 すでに広い緑地をもつ大企業や、病院、老人ホームなどはグリーンシープのサービスを利用しているが、今回のルロワ・メルランとの提携により、個人でもこのサービスを利用できるようになった。

◆電気ガソリン不要、廃棄物も騒音もなし
 ルロワ・メルランは、「まったくの自然」「少ない二酸化炭素(CO2)排出」「土壌を肥沃にする」「廃棄物が出ない」といった4つの大きな利点を挙げている。

 これに加えて、騒音がないことも重要な利点である。というのも、フランスでは今年6月4日以降、23の県で正午から午後4時まで芝刈り機の使用が禁止されているからだ。

 また、羊による芝刈りには経済的なメリットもある。グリーンシープの試算によれば、従来の芝刈り機と比較して平均25%のコスト削減が見込めるという。

◆山火事対策やコメの有機農法にも
 一見すると斬新な取り組みに思えるが、動物の力を借りたエコロジカルな緑地管理は、決して新しい発想ではない。グリーンシープと同様に環境配慮型の緑地手入れを専門とするエコムートンによれば、アメリカ西部ではヤギに雑草や低木を食べさせているという。雑草が茂った土地は火災の燃え広がりを助長するため、これは山火事対策の一環でもある。

 同様に、山火事予防の取り組みはヨーロッパ各地にも見られる。ポルトガルでは山岳地帯に生息するガラノ種の馬が、スペインではヨーロッパバイソンが、火災の燃料となりやすい雑草を除去する役割を担っている。(同)

 カナダでもエコ放牧は拡大している。モントリオール市では2016年にプロジェクトが始まり、夏には市内の公園でヤギが草を食む姿が見られる。(同)

 また、日本においても動物による農業支援の例は存在する。アイガモ農法は、田んぼに放したアイガモが雑草や害虫を駆除するもので、有機栽培を可能にする。さらに、育った合鴨は食肉として消費できるという利点もある。

Text by 冠ゆき