旅行が搾取に加担? 観光と現代奴隷制の関係とは
著:Joseph M. Cheer(モナッシュ大学 Lecturer, National Centre for Australian Studies, Faculty of Arts)、Kent Goldsworthy(RMIT大学 PhD Candidate and Teacher – RMIT School of Global, Urban and Social Studies)、Leigh Mathews(ディーキン大学 Founder / Principal Consultant, Alto Global Consulting. Coordinator, ReThink Orphanages)、Shivani Kanodia(モナッシュ大学 Postgraduate Researcher in Sustainable Tourism)
休暇は、それを取れる人は誰しも楽しみにするであろう恵みである。それは、欲求を満たし、リラックスし、気力を取り戻すための機会だ。これらをしながら世の中の為になれるのならそれより良いことは果たしてあるだろうか。
しかし、旅行者を満足させるためのコストは、多くの場合、日の目を浴びない。現代の奴隷的な慣習は、途上国の観光供給のプロセスの中で特に明らかであるのに。
◆追い詰められた人々
現代奴隷制とは借金による束縛や強制労働など、奴隷制度に近い行為や慣習のことを指す。それは、多くの場合、実力行使、詐欺や、自由のはく奪等を含んでいる。
現代奴隷制とファッション・衣服業界、農業、そして家事との繋がりは広く知られている。これらは、追い詰められていて、略奪を受けやすい途上国の人々の中で盛んである。
もちろんこれは、先進国が現代奴隷と無縁だということではない。オーストラリアでは連邦議会の委員会が現代奴隷法の制定を探索している。これは2015年にイギリスで現代奴隷法が制定されたのを受けてのものだ。これらの動きは国内および国際的なサプライチェーンでの現代奴隷へ対処するべきだという機運が高まっていることから来ている。
現代奴隷制に対する意識は、先進国が世界中で一番低い。特段途上国では、先進国で消費される商品やサービスの生産のために、賃金が安い労働力が搾取されているのである。
グローバル・スレイバリー・インデックス(訳:世界奴隷指数)によると、2016年時点で約4580万人もの人がなにかしらの現代奴隷制に苦しんでいる。そのほとんどは労働者の権利がしっかりと守られていない途上国で起こっている。
国際旅行業界に関しては、その現代奴隷制との繋がりはおおむね無視されている。これはより持続可能、再生可能で誠意のある観光の形の奨励を以てしても起こってしまっている。
観光業は多くの場合コミュニティをよくする持続可能な経済成長と結び付けられる。これは観光客にお金を最大限に使ってほしい政府によって奨励される。
国際旅行は完全に良いとも完全に悪いとも言い切れない。しかしながら、効用をもたらす可能性以上に、観光と現代奴隷制との繋がりはほとんど取りざたされていないことを認識しなければならない。
特に、この産業のために貢献している人々が直面する過酷な環境についての議論はなされていない。これは、特に労働者の権利や社会的公正に問題がある特定の観光業に多くみられる。
奴隷と観光業の最も強いつながりは買春ツアーや孤児院観光、そしてサービス業のサプライチェーンでみられる。
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