ジブチ共和国に中国が軍事基地を開設 アフリカで拡大する中国の役割をどう読み解く?
著:Theo Neethling(ザ・フリーステイト大学 Professor and Head: Political Studies and Governance in the Humanities Faculty)
中国はアフリカに軍事基地を構えていることでは有名ではなかった。さらにその基地が従来の中国の影響圏を超えた地点に新設されていることも知られていない。しかし中国がアフリカの角にあるジブチ共和国に軍事基地の開設を決定したのを機に、アフリカにおける基地建設、影響圏の拡大についての認知度も変化しつつある。ジブチ軍事基地はアメリカ・アフリカ軍の軍事基地の隣に建設される。
ジブチ軍事基地を拠点とすることで、中国はアフリカにおける平和維持活動や人道支援活動に加え、周辺の海上活動の効率を高めることが可能となる見込みだ。
国際社会における中国のポジションという観点からジブチ軍事基地の開設をどのように理解できるだろうか。さらにアフリカにおける中国の軍事的影響圏の拡大が、どのような結果をもたらすと予想できるだろうか。
簡潔に言えば、ジブチ軍事基地開設によりアフリカ大陸における中国の役割と、他国の対アフリカ政策が一変したという事実はない。しかし状況は段階的に、徐々に変化している。特に国際的な平和維持活動の様子を見てみると、このような変化が確実に起こっていることがわかる。
中国政府の国連の平和維持活動に対する考え方、取り組み方は、国際連合に加盟した1971年当時のものから大きく変化している。冷戦終結後を転換期とし、それ以降長い年月をかけ徐々に平和維持活動に前向きな姿勢を見せ始め、貢献の意思を強く示すようになった。
中国は現在、南スーダン、マリ共和国、コンゴ民主共和国の平和維持活動にかなりの数の兵員を派遣する。その裏にはアフリカにおける中国の存在感の高まりが、その他大国にとっての戦略的脅威にはならないというメッセージを発信しようとする意図がある。中国は脅威ではなく、発展途上国の友好国であると認識されたい。そしてグローバルな期待にいっそう応えられる国になりたい。中国のこのような野望には、緊張関係、対立関係を緩和しなければならないという思いもある。
アフリカにおける中国の役割は、第一にグローバル・パワーとしての立場の主張、第二に中国自身のポジティブなイメージの構築、第三に国益の拡大という大きく分けて三つの観点から理解することができる。
◆グローバル・パワーを目指す中国
中国は自身がグローバル・パワーであると世界に示そうと目論むようになった。ジブチ軍事基地の設置の背景にはこのような狙いがあったと考えるべきだ。国際平和維持活動に対する中国の考え方も同じだ。つまり中国にとっての平和維持活動とは、国連を通して国際情勢により大きな影響力を発揮するための手段なのである。
世界各国に多数の軍事基地を所有するアメリカと違い、中国は平和維持活動に参加することで世界に存在感を示してきた。その結果、中国はアフリカだけでなく世界各地で平和維持活動を展開する上で非常に重要な国となった。
国連平和維持活動に兵員の派遣と資金援助の両面で大きな貢献を果たした国は中国の他にない。この事実から中国の貢献度が見て取れる。
次に第二の観点について、中国は過去20年間かけて国連平和維持活動における役割を拡大してきたが、それにより建設的な国というポジティブなイメージを作り上げ、グローバルな評価を得ることができた。中国はグローバル・パワーとしての責任を果たす国と認められることを目標に掲げ、そのための外交手段として平和維持活動を意図的に、そして巧みに利用した。さらに平和維持活動への貢献により、アフリカからの支援要請があった場合やアフリカで問題が発生した場合にもより迅速に対応できるようになった。その上、アフリカ政府とアフリカ連合の双方からの信頼を得るための手段としても機能した。
そして第三の観点について、中国は主に中国政府の政治的利権やそれに関連する投資といった問題が絡む分野の政策方針をより実用的な方向へと転換しており、アフリカで新たな役割を担うようになったのはその政策転換の一環であると言える。中国はアフリカの最大貿易相手国だ。そのため中国の戦略的、物質的利益はアフリカの利害とより密接に結びつき、複雑に絡み合っている。
しかし平和維持活動により積極的に参加することになったことで、対アフリカ政策と中国が歴史的に掲げてきた内政不干渉の原則との調和を保つことが困難になるという問題が発生した。南スーダンにおける平和維持活動が顕著な例だ。
◆戦略的利益の保護
アフリカの最も新しい国家である南スーダンは、中国にとってはチャレンジであると同時に好機ともなった。南スーダンで進行している紛争の政治的解決を中国が支援するためには、長年主張し続けてきたアームズ・レングス原則を緩和しなければならないという問題があった。しかし南スーダンが生産する石油資源を始めとする戦略的利権は確保しておかねばならない。
このような不安定かつ不穏な状況の下、中国は国連南スーダン共和国ミッションに平和維持活動で十分な貢献を果たす、という選択肢を取らざるを得なかった。南スーダン共和国ミッションにはついに戦闘部隊も派遣した。
南スーダンの場合、中国は平和維持活動のみならず紛争当事者間の仲裁や関係各国を招いた和平交渉への参加など、新たな政治的役割を次々と担わなければならなかった。これが中国の外交政策への圧力となり、国際平和維持活動への参加方法を改める契機となった。
南スーダンにおける中国の平和維持活動から、自国の戦略的利益を確保するためには他国の内政にも何らかの介入が必要な場合もあるという暗黙の了解が中国にあったことが示唆される。
その範囲と規模を誇張してはならないが、中国の南スーダン平和維持活動への参加が、アフリカの平和維持及び安全保障問題において中国がよりいっそう積極的な役割を担おうとしていることを示唆するのも確かだろう。
それと同時に中国が海外投資をする場合、南スーダンのようにハイリスクな戦略の選択を余儀なくされていれば、中国のアプローチがそれだけ熟考を重ねた公平なものであるとも判断できる。南スーダンの政治力学への積極的な関与は、中国が長年主張し続けてきた内政不干渉の原則に基づく政策と簡単には相容れないという事実は常に変わらない。
◆中国のアフリカ進出は新たな植民地政策となる?
ジブチ軍事基地など中国のアフリカ進出は、アフリカに新たな形の植民地政策を生むだろうか。
それはほぼあり得ないだろう。中国は特に発展途上国への介入主義的な政策に潜む危険性を重く見ている。そして中国は発展途上国から国際政治を行う上での友好国と見なされたいと望んでいる。
しかし中国が自身の経済的利益に危機が及ぶと判断した場合には、外交力 (ソフト・パワー) と共に少なくとも軍事力 (ハード・パワー) を行使した対策を採用する決心をしたとしても、もはや驚きはしないだろう。
アフリカ各国の主導者は、ジブチ軍事基地に見られるような他国の進出を現実的に考えなければならない。アフリカにおける中国の存在感、そして中国からの投資をアメリカの代わりとして喜んで受け入れることはできない。そして中国政府が自国の利益を守るためにアフリカを外交手段として、さらには軍事的手段として利用することを許してはならない。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by t.sato via Conyac