絵文字を使おう! 人間関係をよくする効果、研究で明らかに
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スマートフォンでのやりとりが日常化するなか、言葉のニュアンスや感情をどう伝えるかは、コミュニケーションの大きな課題だ。その解決策として使われているのが、絵文字。とはいえ、絵文字が実際に相手との関係性や印象にどのような影響を与えているのか。米科学誌プロスワンに掲載された最新の研究は、この点を実験的に検証した。研究チームは、絵文字の使用が「反応してもらった」と感じさせる度合い(perceived responsiveness)を高めるか、さらにそれが関係満足度や好感度に影響するかを調べた。
◆絵文字で「ちゃんと向き合ってくれている」と感じる
実験には260人のアメリカ人成人(平均年齢38.5歳、女性53%)が参加。全員がスマホを日常的に使い、テキストでやりとりしている人たちだ。研究では、参加者に15件のメッセージ例を提示した。いずれも「友人との日常的なやりとり」を想定した会話で、1つの会話につき2往復(参加者→相手→参加者→相手)の構成になっている。
ここでポイントになるのは、参加者ごとに提示されるメッセージがランダムに割り振られていた点だ。ある参加者には、相手の返信が絵文字付きで表示され、別の参加者には同じメッセージから絵文字だけが取り除かれて提示される。このようにして、「絵文字あり」と「絵文字なし」の条件の違いによって、印象の変化を比較できるようにした。
評価の対象になったのは、相手の返信に対する「反応のよさ」、送り手の「好感度」、相手との「親密さ」、そして全体としての「関係満足度」の4項目。それぞれについて7段階で評価してもらい、絵文字の有無がどのように作用するかを分析した。
結果は明確だった。絵文字ありの返信は、絵文字なしのものに比べて一貫して「反応が良かった」と評価される傾向があった。さらに、この「反応の良さ」と感じる感覚が、相手への好感度、親密さ、そして関係満足度の向上につながっていることもわかった。つまり、絵文字が直接的に印象を良くするというより、「ちゃんと返してくれてる感」が伝わることで、全体的な関係評価が押し上げられるという構造だ。
◆種類は問わず、感情の一致がカギ
興味深いのは、どんな絵文字を使うかはそれほど重要ではないという点だ。😊のような顔文字系でも、✨や🍀のような顔文字以外のものでも、効果に違いは見られなかった。また、参加者の性別、年齢、ふだんどれくらい絵文字を使っているかといった個人差も、今回の効果には影響を与えなかった。
研究チームは、絵文字が果たす役割について、「視線や声のトーンなど、対面での非言語的なサインの代わりになるもの」と位置づけている。特にテキストだけのやりとりでは、気遣いや共感、関心といった感情が伝わりにくくなるが、絵文字を加えることでそうした「気持ちの余白」を補えるというわけだ。ただし、注意点もある。メッセージの内容と絵文字がズレていると、かえって不自然に感じられることもあるため、感情のトーンと一致していることが重要だという。
日常のやりとりで「ありがとう😊」や「楽しみだね!✨」といったように軽く絵文字を添えるだけでも、相手の印象にプラスに働く可能性がある。ただし、ビジネスメールや深刻な内容の会話では、絵文字の使い方には配慮が必要だ。TPOに応じて適切に使えば、テキストコミュニケーションをよりあたたかく、信頼感のあるものにしてくれるツールになりうる。




