生態が謎に包まれていたアゲハチョウ 解明に初成功 

画像はイメージ(xulescu_g / Flickr

マダガスカル中部および南部で採取されたアゲハチョウの一種「パピリオ・メリオネス(Papilio meriones)」について、卵から成虫に至るまでの生活史が初めて詳細に記録されました。

【画像】生態が明らかになった「パピリオ・メリオネス」

国際学術誌『Zookeys』で発表されています。

マダガスカルで記録されたアゲハチョウ

パピリオ・メリオネスは、かつてアフリカ大陸に分布する「モッカーアゲハ(Papilio dardanus)」の亜種とされていましたが、近年の系統分類の見直しにより独立種と認められた個体です。

これまで進化や遺伝に関する研究は進められてきたものの、幼虫期など未成熟段階の生態はほとんど分かっていませんでした。

今回の研究では、マダガスカル・マントゥサ周辺の森林で採取された卵を人工的に飼育。

発育段階ごとに形態や期間を記録し、各段階での色や構造の違いが詳しく観察されました。

孵化した幼虫は、体の色や突起の形にいくつかの違いがあり、成長の最終段階で、白い斑点があるタイプとないタイプに分かれることがわかりました。

蛹(さなぎ)も同じように2種類のカラータイプが見られ、どちらも葉のような形に体を曲げて擬態をしていたそうです。

成虫になると、翅(はね)には白と黒の特徴的な模様が現れ、オスとメスのあいだにわずかながら模様の違いが見られたと報告されています。

また、近縁種であるモッカーアゲハやパピリオ・フンブロティと比較した結果、外部形態だけでなく、雄の交尾器の構造や幼虫の頭部の色などにも明確な差異が確認され、分類学的にも独立性が裏づけられました。

パピリオ・メリオネスは、モッカーアゲハなどと異なり、擬態的な模様を持たない雌が現れる点でも注目されており、進化生物学の視点からも興味深い存在とされています。

本研究は、これまで謎に包まれていた同種の生活史を初めて明らかにしたものであり、分類学・生態学の双方において貴重な基礎資料となることが期待されています。

Text by 本間才子