【2013年注目ニュース】7.北朝鮮の外交姿勢
北朝鮮では、2011年12月に金正日前総書記が死亡し、金正恩体制が発足。核実験やミサイル発射実験などを、経済制裁が実施されている中でも強行しており、世界及び日本の安全保障上、その動向は重要な問題だ。
特に2012年12月には、安保理決議で禁止されている(弾道ミサイル技術を利用した)人工衛星発射実験を行った。北朝鮮は「平和的目的」を強調しているが、核弾頭の搭載を目論んでいることは公然の秘密とされる。打ち上げから数時間後、北朝鮮が「打ち上げ成功」を祝うのをよそに、国連安保理は緊急会合を開いた。各国も「安保理決議への明白な違反行為」への「制裁の強化」を求める声明を発表。一方、北朝鮮と、武器の開発や取引によって強いつながりを持つイランは「アメリカなどの独裁国家は、自由な独立国の進歩を阻むことはできない」との声明で祝福した。
同様の発射実験は4月に失敗しており、今回は事実上初めての成功といえる。北朝鮮が、韓国、日本、ひいては、アメリカ西海岸にまでミサイルを飛ばす実力を身につけたという脅威論と、実際に核弾頭を装備して発車するためにはさらに多くの課題があるため、軍事的な脅威とはなりえないという楽観論と、両方の報道が見られる。
別の観点からの脅威論として、今回の発射直前に「発射延期」の情報が韓国筋からもたらされ、日韓主要紙が全面的に報じたことなど、情報面での懸念が指摘される。北朝鮮がこれまで示唆してきたミサイル関連の「技術的困難」も、実は周囲の監視をあざむく手段だった可能性があると報じられており、「恥をかかされた」オバマ政権や国連安保理は対抗を余儀なくされるとみられている。
さらに、技術的進歩そのものよりも、問題は、北朝鮮がイラン、ミャンマー、シリアなどと武器・技術取引を行い、核ミサイルの相互開発に拍車がかかることだという観測がある。これを避けるためには、破壊工作をも視野にいれた、これまで以上の対策が必要との意見もある。とりわけ焦点は、北朝鮮に唯一睨みをきかせられる国、中国の協力が得られるかだ。特に中国にとっては、北朝鮮への威嚇としてのアメリカや韓国の軍事演習は、自らへの挑戦とも映り得るため、それを嫌っての行動を促せれば、抑止効果があるかもしれないとされる。
なお、こうした行動は、金正日氏の代と通じる部分が大きい。ブッシュ政権時代に北朝鮮都の外交にあたった米国の専門家は、そのため、金正恩氏が改革を先導するという見込みはなくなったと指摘している。
今後国連を通じ新たな制裁が検討されると予測されるが、今回ミサイル発射が強行されたことで、これまで4年間の制裁が機能していないことになるため、日本などにとっても悩ましい状況が続く。