これから世界で必要とされるスキルとは? 学校では身につけられない「SEL」

 グローバル化や新しい技術革新によって、日本でも働き方が大きく変わりつつある。そんな中で自らのスキルアップを考える人は学生にも社会人にも多いだろうが、ただ闇雲にスキルアップのための学習をしても仕方がない。今どういったスキルの人材が不足しており、また将来求められるスキルは何かを知り、戦略的なスキルアップを図りたいものだ。

◆圧倒的に人材が足りていない日本
 実は日本は、圧倒的に人材が足りていない国であるようだ。アメリカの国際的人材会社のマンパワーグループが行った「2016/2017 TALENT SHORTAGE SURVEY」では、43カ国の42,300以上の雇用者を対象に人材不足の現状を調査している。「十分な人材確保が困難である」と答えた雇用者は、調査国の平均は40%である中、日本は86%という結果で、グローバル平均の2倍もの割合の雇用者が人材の不足を感じている。86%という数値は調査国で最も高く、雇用主の視点では、「日本は世界で最も人材が不足している国」といえるだろう。このランキングは2位の台湾が73%、3位がルーマニアの72%であり、反対に最も人材が足りている国ともいえる最下位の中国は10%という結果であった。

 仕事別にみると、日本ではエンジニア、IT関連の分野で特に人材が不足しているようだ。また年代ごとにみると、日本はリーマンショック後の2009年はこの割合が大きく落ちているがそれからは増加の傾向にある。また2006年からの10年すべてを通し50%を超えていて、日本では慢性的に雇用者が十分な人材を確保することが困難な状況が続いているようだ。また世界的に見ても、2016年の世界平均は2007年以降最も高い数値で、人材不足は世界的に進行している。こうした人材不足は、労働人口の不足というだけでなく、雇用主が必要とするスキルを備えた人材が不足しているという、人材スキルの需要と供給にギャップがあることに要因があるのではなかろうか。

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◆今必要とされるスキル、SELとは?
 それでは、今必要とされている人材とはどのような人材なのだろうか。世界経済フォーラムは、『21世紀に学生が必要なスキルは?』と題した記事を公開している。

 この記事によると、学ぶスキルと必要とされるスキルの差は大きくなってきていて、これは伝統的な教育が学生に必要な知識を備えることができていないからだという。今必要とされるのは、共同作業やコミュニケーション、問題解決能力など、感情と人間関係のスキルである。これらはSEL(Social and Emotional Learning)と言われる方法で習得できる能力で、感情を理解し管理する、ゴールを定め達成し、他人に共感しそれを示す、良好な関係を築き維持し、責任のある決断をするなどに必要な能力の習得である。記事はこれからの進行していくデジタル経済の中で成功するためには、伝統的な学習に加えこのSELの重要性を強調している。

 またリーダーシップと好奇心も、学生が将来の仕事に向けて学ぶのに重要であるという。

 また、世界経済フォーラムの調査「The Future of Jobs」では、2015年と2020年で必要とされるスキルの順位を比較している。

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 2015年で必要なスキルと2020年に必要なスキルは共通する部分も多く、複雑な問題解決能力は2015年、2020年と共通して最も重要なスキルであるという。一方、2020年に重要度が高まるスキルとしては、2020年で2番目のクリティカル・シンキング、3番目のクリエイティビティだ。また、感情の知性(Emotional Intelligence)は2015年にはトップ10に入っていないが、2020年には6番目に入っており、これから求められるスキルといえるだろう。

 人材が不足している中、学生も社会人もスキルアップを考える時代。あなたもこれから必要とされるスキルを念頭に、自己学習やOJTに取り組んでみてはいかがだろうか。

photo GaudiLab / Shutterstock.com

Text by 根本知宜