ノリに新時代! 関東沿岸で“気候変動に強いノリ”を発見

画像はイメージ(Nadya Peek / Flickr

関東地方の太平洋沿岸に自生するノリの一種が、これまで知られていた「オニアマノリ」とは異なる新種であることが明らかになりました。

【画像】ノリ養殖の救世主?関東の海に現れた新種「クロシオアマノリ」

関東地方で新種のノリ

この研究は、東京海洋大学の大学院生と教員を中心としたチームにより行われ、水産研究・教育機構、千葉県立中央博物館分館、北里大学と連携して実施されました。

成果は、学術誌『Phycological Research』に掲載されています。

調査の対象となったのは、神奈川県江の島や千葉県白浜、伊豆諸島などで採取されたノリで、従来はオニアマノリに分類されていました。

研究チームは、葉緑体DNAの解析と形態観察を通じて、これらの個体が別種であることを突き止め、新たに「クロシオアマノリ(Pyropia neodentata)」と命名しました。

名称は、分布域に黒潮が関係することに由来しています。

クロシオアマノリは、葉の部分が通常のノリよりも厚くて丈夫で、荒い海の環境にも耐えやすい特徴があります。

さらに、メスの生殖細胞の形がこれまでの種類とは異なっており、新種と判断する決め手のひとつになりました。

さらなる分析の結果、オニアマノリ自体も東シナ海沿岸に見られるグループと、日本海沿岸に広く分布するグループの2系統に分かれていることも確認されています。

近年、ノリ養殖では海水温の上昇や色落ちによる品質の低下、生産量の減少など、さまざまな課題に直面しています。

とくに現在の養殖品種は、北方系スサビノリの限られた系統に依存しており、遺伝的な多様性の確保が急務だといいます。

研究チームでは、今回発見されたクロシオアマノリを含む南方系の野生種を出発点として、気候変動に強い新品種の育成につなげたい考えです。

この発見に対してネット上では、「美味しくて丈夫ならそれで十分」といった声のほか、「今年の5月は異常な暑さで、もはや亜熱帯を超えて熱帯のよう。熱帯の国でも海苔は食べるのだろうか」といった気候変動を踏まえたコメントも見られました。

Text by 本間才子