3列に並ぶ8つの目… 鋭い牙とフタ付きの巣をもつ珍種クモ、ついに発見 

画像はイメージ(Flicker/ andressolo

インド・タミル・ナードゥ州に位置するカラカッド・ムンダンツライ・タイガー・リザーブ周辺で、クモ類やサソリ類の調査を行っていた研究チームが、新種のクモを発見しました。

【画像】砂利だらけの草原に暮らす“フタ付き巣穴”のクモ、その正体とは?

査読付き学術誌『Taprobanica: The Journal of Asian Biodiversity』第14巻第1号に掲載されています。

インドで新種のクモ発見

調査が行われたのは2021年5月で、その後の分析を経て2025年に「ヘリグモメルス・アウストラリス(Heligmomerus australis)」と命名されました。

このクモは、地中に深い巣を掘り入り口に丸い“フタ”を設ける「トラップドア・スパイダー(地中性トタテグモ)」の一種。

体長は約2.5cmに達し、インド国内でも比較的大型の部類に入ります。

研究者らは、サバンナ草原の赤茶色で砂利の多い土壌に点在する複数の巣穴を観察し、慎重に掘り進めて十数匹を採集しました。

このクモは、全身に剛毛が生え、鋭い爪と牙を持ち、8つの目が3列に並ぶなど、特徴的な外見をしています。

とくにメスの体内構造に近縁種との明確な違いが見られたことから、新種と判断されました。

DNAによる解析は行われていませんが、外見的な特徴だけで十分に他種と区別できるほど、際立った違いがあります。

巣穴は、シルクに乾燥した草や藻類、砂粒、草の葉を混ぜて作られた厚手の丸いフタで覆われ、出入り口はひとつだけ。

採集された個体の中には、成体のメスとともに2匹の幼体が見つかった巣も確認されました。

このクモが見つかったのは、インド本土の南端近くに位置するポタイマライ丘陵という限られた地域のみで、生息域が非常に狭いことから、きわめて希少な種とされています。

属名であるヘリグモメルス属は、南アジアとアフリカにかけてわずか14種しか知られておらず、特にインドやスリランカでは研究例が少ない珍しいクモのグループだということです。

Text by 本間才子