日本の軽自動車、アメリカ30州で公道OKへ 進む合法化
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米コロラド州で、軽自動車の公道での運転を認める法律が可決された。軽自動車の規格は日本独自のもので、米当局の安全・環境基準に適合しないため、アメリカでは認可されていない。ただし、製造から25年を経過した車は輸入可能なため、実際にはたくさんの軽自動車がアメリカで走行している。すでに29の州に軽自動車の公道走行を認める法律があり、人気はじわじわと拡大中だ。
◆公道OK コロラド州で新法誕生
コロラド州では、軽自動車を公道で走行可能な車両として正式に認め、所有権、登録、使用に必要な枠組みを整備することになった。ただし、制限速度55マイル(約89キロ)以上の道路は走ることができない。法律は2027年7月1日から施行される。
現状、アメリカでは軽自動車の新車を販売することはできない。しかし、四半世紀以上経過していれば安全装置や排ガス装置が不適合な車両でも、「クラシックカー」として輸入できるという「25年ルール」が存在する。これにより、ホンダ・アクティ・トラックやアクティ・バン、スズキ・カプチーノ、マツダ・オートザムAZ-1などが人気車種として持ち込まれてきた。
新法により、コロラド州は軽自動車の公道走行を認める法律を持つ30番目の州となり、軽自動車オーナーや購入を希望する人々には朗報となった。
◆安全性が理由 業界団体が難色示す
カー・アンド・ドライバー誌によれば、コロラド州の新法は超党派の議員の協力を得て可決し、明確に軽自動車を車と認めている。2024年に同州の車両管理局(DMV)が提案した規則では、軽自動車が全面的に禁止される可能性もあった。この案は、車両管理局に影響力を持つ全米自動車管理者協会(AAMVA)のロビイストに支持されたもので、彼らの主張は「軽自動車はオフロード専用であるべき」というものだった。
アメリカでは近年、「軽自動車は安全性が低すぎる」として登録に難色を示す州と、規制緩和を訴える軽自動車の愛好家たちの間で攻防が続いている。これに関し、自動車歴史家のダン・アルバート氏はブルームバーグへの寄稿の中で、アメリカの交通安全政策の矛盾を指摘する。
近年主流になりつつあるSUVやピックアップトラックは、安全性を名目に大型化し続けており、その結果、歩行者やほかのドライバーへの危険が増している。一方、軽トラックはその逆の問題を抱えており、ほかの道路利用者にとっては比較的安全だが、大型車と衝突すると運転者や同乗者の安全が脅かされる。アルバート氏は「軽トラックは危険だ」とする行政の主張に対し、「誰にとって?」と問いかける。
◆熱烈軽ファンもいるが……大衆は大型好き
実はアルバート氏は、以前乗っていたフォードのピックアップトラックから、25年落ちのホンダ・アクティに乗り換えている。購入費用が安く、燃費がいいのに加え、頑丈で実用的だと高評価だ。そのアルバート氏は、輸入可能な25年前の軽自動車よりも安全でクリーンな新型の軽自動車が購入できない現状に疑問を呈す。25年ルールは、実はディーラーの利益を守るために自動車業界のロビイストが成立させたものだと主張している。
一方、自動車専門サイト『カーバズ』は、軽自動車のメリットは非常に理解できるとしつつも、アメリカ人は大きな車が好きなので、大衆は興味を示さないだろうとする。アメリカ人が中型と呼ぶ車は、ほかの国ではスーパーサイズで、これが他国でアメ車が売れない理由だと指摘。大きい車が好きなことは悪いことではないので、それは仕方がないとしている。




