深海の巨大エビ、実は世界の海の60%に生息か 研究
© Maroni et al. (2025), Royal Society Open Science, CC BY 4.0
西オーストラリア大学(UWA)の研究チームは、これまで「珍しい」とされてきた深海生物「Alicella gigantea」の分布が、実は驚くほど広範囲に及んでいる可能性があるとする研究結果を発表した。この巨大な端脚類は、最大で30センチに達する個体も確認されており、端脚類としては最大級である。
研究チームは、太平洋、大西洋、インド洋の各地で採取された計195点の標本データを精査し、そのうち75地点から得られた情報をもとに、地球全体の海洋のうち約59%にこの種が生息している可能性があると結論づけた。これまで、この種はごく限られた地点でしか確認されておらず、「ごくまれな深海生物」と考えられてきたが、実際には調査が困難だっただけで、分布域は極めて広かったとみられる。
分析にはミトコンドリアDNA2種類と核DNA1種類が用いられ、異なる海域から採取された個体間にも明確な遺伝的共通性が認められた。これにより、地域ごとに異なる種ではなく、広域に分布する同一種である可能性が極めて高いことが示された。
本研究の筆頭著者であるペイジ・マローニ博士は、今回の成果が超深海帯(深さ6000メートル以深)の生物多様性や、極端な水圧環境における適応、そしてこの領域における生命の進化の歴史に新たな洞察をもたらすと
述べている。
この研究成果は、英国王立協会(Royal Society)発行の学術誌『Royal Society Open Science』に掲載された。
Alicella giganteaは、3000メートルから1万1000メートルの深海帯に生息しており、人類の到達が極めて困難な環境で暮らしている。そのため、これまでの発見は断片的で、標本の採集も極めて稀だった。今回の研究成果は、深海における生物多様性の理解を一歩進めるとともに、これまで「見えていなかった」世界の存在を示している。
今後、さらに詳細なゲノム解析や深海探査の進展によって、こうした大型深海種の進化的背景や生態の詳細が明らかになることが期待されている。




