アメリカで再び注目のサブスクリプション・コマース スタバも参入、7つのメリット

 アメリカでの流行を受け、日本でも4、5年前から注目されてきたサブスクリプション・コマースビジネス。本来、サブスクリプションとは「購読(料)」を意味する。サブスクリプション・コマースビジネスは、必要なものをネット通販などで定期的に購入しやすくする仕組みやサービスと、月額や年額でその販売会社が選んだものを定期的に購入できるサービスに大別できるが、注目されているのは後者のほうだ。例えば、化粧品ならば月の支払い額に応じたセット商品が、その会社のスタッフに見繕われて届けられる。利用者は自分の知らない商品との出会いや割安の購入ができ、提供者は売上が安定し、在庫リスクを下げられる。売る側と買う側の双方にメリットがあるのだが、日本ではどうも今一つ盛り上がっていない。

◆定期購入に力を入れたい通販業界
 Amazonでは日用品の定期的な購入を促すSubscribe & Saveがあり、日本では「Amazonの定期おトク便」として購入商品が最大10%オフになる。配送料は無料で1~6ヶ月の範囲で商品ごとの希望配送頻度が指定できる。買い忘れだけでなく買い過ぎの抑制にもなり、購入費もその手間を削減できるのだ。

 これは理解しやすのだが、サブスクリプション・コマースビジネスとなると、日本人には馴染みが薄く、理解に少し苦労するところもある。サブスクリプション・コマースは、商品そのものが提供者側にセレクトされ、箱に入れられて提供されるのでサブスクリプション・ボックスという呼ばれ方もある。福袋という風習もある日本だが、欲しい商品は自分で選択し、納得して購入したいという消費者がほとんどではないだろうか。選ぶ側のセンスや技量が問われ、また購入者は期待外れであってもあきらめられるような余裕の持ち主でもないと難しいサービスかもしれない。

 出版とイベントを手掛けるDigiday Mediaが、調査会社のConnexityのデータを紹介しており、オンライ活動のサンプリング調査によると、2013年から2015年にかけてサブスクリプション・ボックスのサイトへの月間訪問者数は3,000%増となり、2016年の1月は2,100万のビジターに達したとしている。一方、オンライン販売会社のトップ500社は同じ期間で168%の増加にとどまった。サブスクリプション・ボックスの販売ターゲットは顧客の1~5%ほどであり、ビジネススケールの拡大に問題があるというアナリストの見方を紹介しながらも、化粧品会社のSephoraなど大手の参入例を示し、サブスクリプションビジネスモデルによる製品ラインナップの拡大や、新しい顧客への訴求が模索されていると伝えている。

 ハフィントンポストでも一連の動きについてSephoraのほかスターバックス・リザーブ(希少豆の販売)のサブスクリプションサービスの開始を紹介し、その魅力は再購入率の高さにあると報じた。

 フォーブスではスターバックスコーヒーがサブスクリプションサービスを始めたことによって得ている恩恵を次のようにまとめている。
①利用者の意見の収集、②利用者データの分析、③競合のコーヒー通販会社への対抗、④収益の安定化、⑤計画や予測の正確化、⑥現金収入への貢献、⑦購買者へのクロスセリングの機会の獲得
提供されるのは、高級豆の家庭への販売になるため、消費者と未知の高級豆の出会いを演出するという点では、サブスクリプション・ボックスに近いモデルと考えられる。単にコーヒー豆を通販で販売するのとは差別化が図られている。

◆日本での注目サイトは
 請求・集金業務を管理・統合・自動化するサービスを提供しているCloud Paymentは、主な日本のサブスクリプションコマースサイトとして4つを紹介している。そのなかには、月額990円(税別)で1,200種のTシャツからスタッフに選ばれたひとつが毎月届けられるユニクロの「UT Picks」もある。こういった取り組みがどの程度増えるのか注目したいが、日本ではまだ、求める側が積極的に探さないと見つからないレベルだ。

 人間は情報が多すぎると選択できなくなると言われている。また、時間がなければ同じ店で同じものばかりを購入し、マンネリ化のすえに消費が減退してしまう。優良情報をセレクトしてくれるキュレーションサイトがあるように、サブスクリプション・コマースが求められる背景なのかもしれない。

 無料のサービスが増える一方で、サブスクリプションという価値に合わせた利用料金を徴収する逆の流れが生まれつつあると見ることもできそうだ。無料や格安というコモディティ化した商材だけではなく、売上ポートフォリオの点でも、サブスクリプションのようなモデルの必要性があるのだろう。

Text by 沢葦夫