深海に“共存できないはずの生物たち”が… 35日間の探査航海で明かされた真実

画像はイメージ(Flicker/ Alexander Gerst

南大西洋に位置するサウスサンドウィッチ諸島近海で、深さ700mの海底から熱水が噴き出す「熱水噴出孔(ハイドロサーマル・ヴェント)」が新たに発見されました。

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その詳細が海洋学術誌『oceanographic』のウェブサイトで公開されています。

共存が難しい生物たちが同一空間に集結

この発見は、世界最大規模の海洋生物調査プロジェクト「オーシャン・センサス」の一環として行われた35日間の探査航海中に得られたもの。

探査船を運用するシュミット・オーシャン研究所「Schmidt Ocean Institute」が、調査の様子を公式YouTubeチャンネルで公開しています。

調査を行ったのは、シュミット・オーシャン研究所の探査船「Falkor too(フォルコア・トゥー)」に乗船した国際チーム「GoSouth」。

英プリマス大学、ドイツのGEOMAR、英南極観測局などの研究機関が協力しました。

南大西洋のサウスサンドイッチ諸島は、地殻変動によって形成された海溝や海底火山が点在する地域で、特異な生物の進化を支えています。

調査船はチリのプンタ・アレナス港から8日間かけて到達。

探査機「SuBastian」によって詳細にマッピングされた火山カルデラの底部では、ポックマークと呼ばれる窪みが2ヶ所発見され、その一方からは計4つの熱水噴出孔が確認されました。

最大の噴出孔は高さ4mに達し、化学合成によって生きるフジツボや巻貝の姿も捉えられています。

これらの噴出孔は、サウスサンドウィッチ諸島周辺で知られるものとしては最も浅い水深に位置し、遠隔操作機による詳細な探査が行われたのは今回が初めてだということです。

活発な火山活動を物語る軽石の堆積も確認され、地質学的にも貴重な成果となったほか、この特殊な環境の近傍では、サンゴやカイメンなどの大型生物も記録されています。

本来は共存が難しいとされる生物群が、同一の生息空間に集まっているという、非常に興味深い事例です。

チームの一員であるジェニー・ゲイルズ准教授は、「このような発見は非常に稀であり、海洋探査と海底マッピングの重要性を改めて示すものです」と話しています。

この調査では他にも、サンゴ、カイメン、ヒトデ、底生クシクラゲなど多数の未確認種が発見されました。

正確な新種数は、今後開催される分類学者によるワークショップで正式に評価される予定です。

この投稿には、「息を呑むような映像と見事なプレゼンテーション」「感動を世界中に届けてくれてありがとう」「チームの皆さんが本当に楽しそうで微笑ましい」といった称賛の声が寄せられました。

Text by 本間才子