イタリアの生理休暇 世界で初めて生理休暇を制度化した日本との違いとは?

 現在民主党の提案によってイタリア大議院において生理休暇制度を導入するための法案が審議中だ。その法案の背景には、2016年2月にイギリスの某企業が生理休暇を認めた事例があるとされる。同時に、日本が世界で最も早く生理休暇を法制化したこともしばしば注目されている。

 生理休暇制度の導入をもってイタリア人女性がどのような権利を認められるのだろうか? 日本をはじめ、すでに生理休暇制度がある国とはどのように異なるのだろうか?

◆70年前に制定 − 日本の生理休暇とは?
 日本は、1947年に生理休暇を制度化し、世界でもっとも早く生理休暇を法制化した国とされている。労働基準法第 68 条では、「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と規定されている。つまり、自動的にもらえる休暇ではなく、生理によって仕事をすることが困難なほど体調が悪化している女性労働者が申請した場合に取得できるものだ。全ての雇用形態が含まれているため、契約社員やパートを問わず申請することが認められている。

 労働基準法では、生理休暇の日数が限定されていないが、 職場によって日単位、半日単位、または時間単位で請求できるように運用されている。生理休暇が有給か無給かについても労働基準法が規定していないため、会社ごとに就業規則で定められている。また、生理休暇を取得する際に証明を要求される場合があるとしても、法律上では医師の診断書は必要とされていない。

◆低い取得率
 上記のように早い時期から日本では生理休暇が法律的に扱われることになったが、実際にはその取得率が非常に低い。45歳未満の女性を対象にした2008年の調査によると、月経痛が「かなりひどい」と答えた女性は27.8%、「ひどい」と答えた女性は3.8%だ。それに対して、1年以内に生理休暇を取得した割合は4.4%に留まっている。その理由として「取得しづらいため」と答えた割合は38.1%で最も多く、次いで「休むほどのことではないため」(33.0%)となっている。また、23.7%の回答者が「生理休暇のかわりに年次有給休暇を使用するため」と答えた。

 調査からわかるように、日本では法律で生理休暇が認められているものの、実際に取得している女性はもちろん、制度の存在を知っている人も少ない。また、日本などの生理休暇事情を報じた英ガーディアン紙も示唆しているように、生理休暇を取得することによって同僚に迷惑をかける、あるいは不真面目という印象を与えるといった不安があるため、生理痛がひどいにもかかわらず休まないようにしている女性も少なくない。2001年に生理休暇制度が導入された韓国でも同じ傾向が見られるようだ。

◆3日まで有給 − イタリアの生理休暇法案
 では、イタリアにおいて現在審議中の法案が成立したらどのような制度ができ上がるのだろうか。

 民主党が提案した法案では、生理痛がひどい場合は月に3日までの休暇を取得することが可能で、3日とも有給として扱われる。日本と同様に雇用形態を問わず申請することができる。ただし、女性だからといって誰でも休暇を取得できるとは限らない。というのは、年に一回月経困難症を証明する診断書の提出が義務づけられている。

 この提案の背景には、イタリアでは60~90%の女性が月経困難症を起こしており、そのなかの約3割が寝込むほどのひどい生理痛に悩まされているというデータがある。

◆女性を保護するのではなく、誰もが働きやすい職場を作る
 生理がいまだにタブー視されているため、生理休暇制度に対して抵抗を感じる人が少なからずいる。日本のように制度が定まっている国、あるいはイギリスの企業のように事例を作った国では賛否両論がわかれており、生理休暇を利用する女性が「ズルい」と批判されることもある。

 生理痛は個人差があるため、客観的な証明が難しいとされており、日本では診断書の提出が求められていない。しかし、そのような制度は、見方によっては、女性が生命の誕生のために有している月経、妊娠、出産、哺乳という母性機能は保護する必要があるということを強調している。そのような偏見を支持する日本の生理休暇は、女性のワークライフバランスを支えるどころか、女性に対するジェンダー・バイアスをより一層強めるという悪影響をもたらす可能性もある。

 一方、イタリアの法案が月経困難症に重きを置いている点には大きなメリットがある。つまり、生理がある=女性である上に休む必要があるという概念を広めるのではなく、月経困難症の存在を知ってもらうことによって生理に関するタブーを失くし、より働きやすい環境を作っていけるのではないかと考えられるからだ。

Text by グアリーニ・レティツィア