進歩する北朝鮮ミサイル、先制攻撃も必要? 新ミサイルが本土射程で米も危機感
北朝鮮によるミサイル攻撃の可能性が現実味を増している。3月6日には東倉里(トンチャンリ)付近から4発の弾道ミサイルが発射され、そのうち3発が日本の排他的経済水域に落下したとされる。すでに日本、韓国、グアム、ハワイはミサイルの射程圏内に入っており、あと数年でアメリカの都市も攻撃可能という見方もある。北朝鮮のミサイル技術の著しい進歩を踏まえ、迎撃だけではなく、先制攻撃も必要だという意見も自民党内から出ている。
◆射程圏内の日本。脅威への対応はミサイル防衛で
タイム誌は、北朝鮮のゴールは、核弾頭を搭載した弾道ミサイルでアメリカ本土攻撃を可能にすることだと述べるが、グアム、ハワイ、そしてそれぞれ2万8000人と5万人の米兵を抱える韓国と日本が差し迫った脅威にさらされていると指摘する。
北朝鮮からミサイルが発射された場合、短距離か中距離弾道ミサイルであれば、韓国に配備したTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)の迎撃ミサイルにより撃ち落とすことが可能だ。弾道ミサイルの探知、追尾を目的とするTHAADのレーダーは、C2BMCと呼ばれる指揮管制システムにより、イージス、パトリオットミサイル防衛システムを含む他のシステムとリンクしている。THAADの迎撃ミサイルで撃ち落とせない場合、THAADのレーダーの追跡データは、日本海を航行するアメリカ海軍のイージス艦と共有され、イージス艦が敵ミサイルを迎撃する。イージス艦で落とせない場合、THAADとイージス艦のレーダーのデータは、C2BMCシステムを経由してパトリオットミサイル発射システムと共有され、パトリオットミサイルが敵ミサイルを攻撃する(CNN)。
◆システムは盤石ではない。日本は先制攻撃すべきか?
しかし、このミサイル防衛システムも確実ではないとCNNは指摘する。イージス・システムは実戦で弾道ミサイルを撃墜したことは一度もない。THAADも実戦で使われたことはなく、米北朝鮮分析サイトの38ノースによれば、同時に複数のミサイルが発射されれば太刀打ちできないという。また、潜水艦から弾道ミサイルが発射される場合も効果は期待しにくいという。
このような状況から、自民党内でも、いまやアメリカに任せきりでは北朝鮮に弱腰と思われるとし、抑止力となる武器の配備が必要だという声や、北朝鮮のミサイル施設に先制攻撃をすべきだという意見まで出ている、とロイターが伝えている。
もっとも、北朝鮮を攻撃できる武器を配備することは、中国の東部沿岸を射程に入れることにもつながり、中国からの抵抗は避けられないという意見もある。また、北朝鮮を攻撃した場合、北朝鮮が持つ移動式発射台を探知・追跡する日本の能力が限られていることから、大規模な報復攻撃を受ける恐れも指摘されている。
◆新ミサイルの発射試験は秋か?核弾頭搭載も視野に
ワシントンのストラテジック・センチネル社で3次元再構成を指揮し、北朝鮮のミサイルと核施設の模型を16年間作っているネイサン・ハント氏は、あと4、5年経てば北朝鮮が核弾頭を搭載したミサイルでアメリカの都市を狙えるようになるという見方に対し、かなり正しいと指摘している(タイム誌)。
6日に発射されたミサイルは米韓への力の誇示の意味合いが強かったものの、より大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に適している東倉里の西海衛星発射場から(弾道ミサイルとして)初めて発射されたことに注目すべきだ、とタイム誌は述べる。北朝鮮は実際のICBMの試験を進めるので、今後ここからのミサイル実験が増えても大きな驚きとはならないだろうとハント氏は指摘している。北朝鮮の新型長距離弾道ミサイルKN-14の飛距離は、6000キロから1万5000キロと推定されており、同氏は、秋にも発射試験があるのではないかと予想している。
ミサイルが完成すれば、あとは核弾頭を搭載するだけだ。同氏は、北朝鮮はすでにICBM15基分の核物質を保有し、直径50センチほどの核爆弾を作れるまでになっており、さらなる小型化も視野に入ってきたと見ている。
ホワイトハウスを去る際、オバマ前大統領はトランプ大統領に対し、北朝鮮が「最も緊急の課題」だと伝えたという(ニューヨーク・タイムズ紙)。事態はまさにそうなっており、今後の予期せぬ暴発を防ぐためにも、アメリカの適切な対応が求められる。