お金を使わない日本の若者は変? 海外が心配 「所有」から「体験」にシフトとの見方も

 日本のミレニアル世代(2000年以降に成人、または社会人になった人々)の消費離れが深刻だと海外メディアが報じている。消費は美徳だった親の世代とは対照的に、人生の大半を日本経済の「失われた数十年」において過ごした彼らは、慎ましやかで物欲がない。今後の消費をけん引する世代がこれでは日本経済の未来は暗いのではと心配されるが、モノの消費にとらわれない彼らが新しいマーケットを作っていくのだという意見もある。

◆高い物はダサい?若者は節約こそ美徳
 サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)は、日本のミレニアル男性は父親たちから見ればさぞかし残念な世代だろうと述べる。戦後の復興期から大人の男のシンボルであった腕時計はスマホで代用。女性をデートに誘うための必需品であった車も買わなくなった。会社員の象徴であるネクタイにも興味がなく、ネクタイ産業は危機にあると伝えている。

 酒を飲むのはサラリーマンの非公式な仕事であったはずだがその時代も終わったと同誌は述べ、アルコール消費量はピークだった1996年度と比べて90%弱にまで減っていることを指摘する。ワイン情報サイト『ワイン・バザール』が行なったインタビューでは、20代男性の39.8%が「お酒NG」と回答しており、60才以上の25.0%を上回っている。

 ウェブ誌『クオーツ』は、ファッションにも変化が現れていると指摘する。奇抜なデザインやワイルドな色使いなどで日本の若者ファッションの発信地として紹介されてきた原宿にさえ、ユニクロなどのファストファッションの波が押し寄せているとし、独特のセンスやスタイルが失われてしまったと残念そうだ。

 ロイターのインタビューに答えた20代の女性は、「上から下まで高いブランド物のファッションはかっこ悪い」と述べ、安いアイテムに少しだけ高い物を組み合わせ、ファッションスキルを見せるのがむしろかっこいいと答えている。電通総研の調査によると、高校生、大学生、20代社会人の回答者の60%以上が「金払いがいい」と思われるより「堅実、節約家」と思われたいと答えており、ミレニアル世代が評価の基準としてよく使う言葉が「コスパ」だとロイターは指摘している。

◆不景気がデフォルト。使うより貯める
 若者がお金を使わない傾向は多くの先進国で見られるが、人口減で家計の消費も減っている日本では、特に深刻な経済問題だとロイターは指摘する。上がらない賃金、非正規待遇、莫大な国の借金に慣れ、世界金融危機や東日本大震災を経て大人になった彼らは、本能的に「使う」より「貯める」を選ぶ。車もブランド品も欲しがらず、お金を使うときにはバーゲン品をまず狙うと説明している。

 スイスの金融グループUBSによれば、2015年の日本人の収入に対する貯蓄の割合は、25~34才の層で最大となっている。この10年間の日本のわずかばかりの消費の伸びは高齢者が牽引し、若者の消費の低下を相殺した形だという(ブルームバーグ)。

◆ミレニアルが買うのは経験。ライフスタイルブランドに商機あり
 もっとも、慎ましいミレニアル世代を悲観することはないという意見もある。ブルームバーグは、親の世代とは違い、彼らは所有することより経験することを重んじ、自分を不幸とも思っていないと述べる。

 コンサルティング会社フラミンゴのリサーチ・エクゼクティブのコルテン・ナレベスキ氏も、日本のミレニアル世代は単に商品ではなく、自分の生活を豊かにしてくれる経験を求めていると指摘。スターバックスが好まれるのは、コーヒーを飲むという目的を満たすだけでなく、いい環境でコンピュータを使ったり本を読んだりできるスペースを、家と会社の間にある第三の空間として与えてくれるからだと述べる。ミレニアル世代は、より自分に合った空間や時間を求めており、消費者の生活に組み込まれる「ライフスタイルブランド」こそが、彼らの消費を取り込めると同氏は見ている(キャンペーン・アジア誌)。

Text by 山川 真智子