ライオンに噛まれた跡がある人間の骨 「人間と猛獣の見世物が行われていた」
画像はイメージ(Flicker/ The Swedish History Museum, Stockholm )
イングランド北部の都市ヨークにあるローマ時代の墓地から、人間と猛獣の直接的な戦闘を示す初の物的証拠が発見されました。
ZME Scienceなどが伝えています。
ライオンと戦ったローマ剣闘士の証拠が発見される
ある男性の骨格に、ライオンによるものと特定された噛み跡が残っていました。
Plos Oneで発表された論文によると、これはローマ帝国支配下のイギリスでも、猛獣と人間が戦う剣闘士の見世物が行われていたことを示す初めての骨学的証拠になるそうです。
この骨は、およそ1,600年以上前のものとされる成人男性のもので、ヨーク市内にある墓地から出土しました。
この場所はローマ時代の精鋭兵士や闘技場関係者の墓地として知られ、過去にも不自然な切断痕や頭部の損傷など、剣闘士に関係する可能性が高い遺体が数多く見つかっていたようです。
今回注目された遺体には、特に骨盤付近に鋭利な歯による複数の噛み痕が確認されており、ライオンなどの大型肉食獣によるものと断定されました。
これにより、ローマ帝国の中心地であるイタリアや北アフリカだけでなく、遠く離れたイギリスにおいても、動物を使った剣闘イベントが実際に行われていた可能性が高まっています。
当時、猛獣との闘い(ヴェナティオ)は、剣闘士競技の一種として人気を博し、ライオン、ヒョウ、クマといった動物が帝国各地から集められていました。
これらのイベントは、皇帝の権力やローマ文化の威光を示す手段でもあり、地方都市での開催も帝国の影響力を強調する意図があったとされています。
今回の発見は、ローマ帝国の娯楽文化がいかに広範囲に浸透していたかを示すと同時に、当時の人々がどのような立場に置かれ、どのように死と隣り合わせの生活をしていたのかを知る重要な手がかりとなったようです。




