なぜ朴氏は、韓国初の女性大統領に選ばれたのか?
水曜、韓国大統領選挙の投開票が行われ、与党セヌリ党の朴槿恵氏(60)が最大野党・民主統合党の文在寅氏を破り、韓国史上初めての女性大統領となった。1960年~70年代に独裁体制を敷き、韓国経済と国力の底上げという「功」と、人権弾圧の「罪」に対する人気と評価が半ばする「傑物」、朴正煕氏の長女である朴氏と、投獄の憂き目に遭った元闘士、文氏の「因縁」が注目されがちな今回の選挙の真の意義はどこにあったのか。
海外各紙は主に、財閥改革、対北路線、朴新大統領の人柄の3点に注目した。
朴氏が51.6%、文氏が48%と、今回の選挙の得票の僅差ぶりを、ニューヨーク・タイムズ紙は「独裁の過去と対峙し、経済格差に対する不満に対処し、北朝鮮を牽制しつつ、繁栄を享受する」という難問の解決力への、国民の迷いの表れと分析した。
実際、2人の候補の主張は対応の「程度差」だったと見る識者もいる。焦点の財閥改革については各紙とも、創業家が少ない持ち株で多数のグループ企業を支配する循環出資構造を「3年以内に解消する」と明言してきた文氏に比べ、「経済的民主主義」を標榜し、野心的な公約をいくつも掲げつつ、今ひとつ政策の具体性に欠ける朴氏の当選に、財閥が「胸をなでおろしている」かもしれないと皮肉混じりに報じた。
第2の焦点、対北政策については、「太陽政策」への回帰を謳った文氏に対し、朴氏は、人道支援や会談に積極的姿勢を見せつつも「核兵器開発」停止という条件を強く打ち出している。親米路線の維持といえ、オバマ政権にとっては歓迎すべき結果だという。実際、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、北朝鮮はここ数カ月、文氏の当選への期待を表明し続けており、先般のロケット打ち上げもその現れとも見られていた。ただし、韓国の有権者はこれに動じなかった格好だという。
人物像については、「女性初」が注目されがちだが、彼女の当選は、伝統的に男性優位の韓国社会の変革を意味しないという見解で、各紙とも一致した。子を持たず、特権的地位にある彼女は「女性であって女性ではない」という。むしろ、過去の指導者の娘であることが50代以上の有権者に受け、追い風となった様子を見れば、伝統的保守傾向の表れともいえる。ニューヨーク・タイムズ紙はこれについて、「世界で朝鮮はなんだと言われるのではないか。何しろ今や、北も南も、独裁者の子どもが国のリーダーだ」という有権者の声を伝えた。
周辺の支持者から「人心掌握術」や「落ち着いた統率力」への評価と、「お嬢様育ちで、わがまま」との批判の両方を受ける彼女。フィナンシャル・タイムズ紙は「目立つけれど実力を見たことはない」との若者の談を紹介し、今後、文氏を支持した若年層をはじめとする有権者に、実力を示し、公約を実行していくことが鍵となることを示唆した。