自民党過半数、改憲なし、野党弱体化、アベノミクス継続…海外紙の予想する参院選とその後
参議院選挙が7月10日に迫っている。18歳選挙権、景気への不安、憲法改正など、さまざまなキーワードがあるものの、有権者を引き付ける魅力ある候補者や、明確な争点を示すことができる政党は見られない。結局有権者は現状維持を選択するだろうとし、自民党の単独過半数獲得はほぼ確実と海外メディアが報じている。
◆つまらない選挙。不安定なときこそ自民党
自民党の単独過半数獲得が予測されるため、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、今回の選挙は近年でもっとも退屈な選挙だと述べ、エコノミスト誌も、多くの日本人が政治はつまらないと思っており、今回の選挙でも、そういった考えが変わることはないだろうと述べる。
ロイターは、選挙権を持つ年齢が20歳以上から18歳以上に変更されても、アメリカの大統領選で一大旋風を巻き起こしたバーニー・サンダース氏のような、若者が支持したい候補者がいないことを指摘。漫画や制服姿の10代のモデルなどで若い有権者を引き付けようとする各党の試みを、「見下されている」と感じる若者もおり、空回りに終わっていると述べる。ロイターは、前回の国政選挙では20代の投票率は60代の半分以下だったとし、今回も関心のない若者が多そうだと述べる。さらに世論調査では、日本社会のリスク回避の傾向を反映し、若者の多くは大人以上に自民党に投票するという結果が出ており、野党にとっては厳しい状況のようだ。
エコノミスト誌は、熊本の地震への政府の適切な対応や、オバマ大統領の広島訪問で安倍首相の人気は上がったとし、消費の弱さや上がらない賃金といった景気の悩みを、イギリスのEU離脱騒動という外部要素のせいにできるというラッキーも重なり、安倍首相が選挙戦で訴える安定と能力が、有権者にアピールすると見ている。
◆違いを出せない野党にも責任
海外メディアと識者は、野党の弱さを指摘する。WSJは、民進党の岡田代表は改憲を選挙戦の争点にし、改憲勢力に必要な議席を獲得させないことを呼びかけているが、牽引力はほとんどないと述べ、有権者は自民党が圧勝したとしても、改憲がすぐになされるとは考えていないと説明する。さらに、安倍首相自身が、有権者の関心は経済にあると知っているため、憲法問題は前面に出していないと述べている。
「イースト・アジア・フォーラム」に寄稿したトビアス・ハリス氏は、野党の票が割れるのも防ぐため、民進、共産、生活、社民の4党が、32の1人区で選挙協力をしているが、有権者の理解を得るのに苦労していると指摘。そのうえ安倍首相から、たとえ勝利してもどのように政権運営をするかという具体的方法が示されていないとし、その「無責任さ」を批判されていると述べる。
若者と政治をつなぐNPO、YouthCreateの原田謙介代表は、「すべての党が消費増税を延期しようと言い、お金が足りないから歯を食いしばって負担しようと言える政治家がいない」とロイターに述べており、野党が違いを出せていないことを示唆した。
WSJは、野党がここまで弱体化し、信頼できる選択肢や、筋の通った政府の政策への批判を提供できなくなったことは、戦後初めてだと述べている。
◆改憲勢力勝利なら経済に悪影響?それともただの現状維持?
エコノミスト誌は、すでに自民と公明で衆院の3分の2は確保しており、今度の選挙では77議席が必要で、他の右寄りの党の協力も確保できれば、憲法改正の発議ができることになると説明する。しかし、世論と公明党は強く改憲に反対で、このような事態になれば、選挙後の政府のエネルギーはほとんど改憲に使われてしまいかねず、経済優先を望む国民にとっては残念な結果になるのではと述べる。
WSJは、最終的には、自民党が過半数を取り、安倍政権がより強固になり、改憲は行われず、野党はさらに弱体化し、その結果、新たなるニュースも、大胆な経済政策も出ないという結果になると予想する。選挙後も、代わり映えのしないこれまでのアベノミクスが続くという同紙は、よかれあしかれ、「手堅く」が有権者の合言葉なのだと述べている。