睡眠短い日本人、独特な居眠り文化に秘密あり? 人前でも抵抗なし周りも寛容…英学者考察
勤勉な日本人は「遅く寝て早く起きる」というのが、外国人が持つ印象だという。事実、最近の調査でも、日本人の睡眠時間の少なさが指摘されている。その一方で、海外では怠け者の象徴と見られる「居眠り」が、日本では容認されているとイギリスの研究者が指摘し、居眠りと日本人について考察している。
◆遅寝に向かう世界。最も眠らないのは日本人
世界的に見て睡眠時間は減っており、「グローバル睡眠危機」が懸念されているという。多くの人々が、就寝時間が遅い夜型になっており、これが睡眠時間減少の最大の理由だとされている。ミシガン大学の行なった研究では、調査に参加した20ヶ国中、日本人の睡眠時間は、平均7時間24分で、シンガポールとともに、最も少なかったという(英デイリー・メール紙)。
同調査によれば、日本人男性は、夜11時半過ぎに就寝し、朝7時前には起床というのが平均のパターンで、女性の場合は夜11時過ぎに就寝し、朝7時起床が平均だ。この結果は、日本人は早起きで遅寝であることを示し、早起きで勤労、長い夜は同僚との付き合いに費やすという日本人の評判と一致すると、タイム誌は指摘している。
◆どこでもいつでも、眠りに落ちる日本人
一方BBCは、ケンブリッジ大学で現代日本について講義するブリジット・ステガー博士の、「『日本人は寝ない』という通説は間違いだ」という主張を紹介している。バブル期の1980年代後半に初めて日本を訪れた同氏は、「働き過ぎ」と不満をいいつつもその真面目さにプライドを匂わせる日本人が通勤電車でうたた寝するのを何度も目撃し、時には立ったまま眠っている人もいるのに、だれも全く驚いていないことに疑問を感じたという。なぜなら、夜の睡眠時間を削り、遅刻に眉をしかめる働き蜂のポジティブなイメージとは裏腹に、怠惰な「居眠り」が許されていたからだ。
そして、女性も男性も子供も、時と場所を選ばず寝てしまうことに気付いたという。布団で寝入るのが怠け者のサインなら、大人が職場で、子供が学校で、居眠りするのがなぜ許されるのか。同氏はこの矛盾を解明するため、日本人と眠りを研究対象としたらしい。
◆添い寝が原因?
ステガー氏が注目したのは、日本の添い寝の習慣だ。イギリスでは、規則正しい眠りの習慣が確立されるよう、子供は小さなころから親と別室で寝かせるが、日本では、少なくとも学齢に達するまでは添い寝で愛情を与えたほうが、独立した社会的に安定した大人に育つとされていると同氏は説明する。そのため日本人は、人前で寝ることに抵抗がないのではないかと述べ、東北の震災で不安を抱えた被災者が、様々な葛藤や問題にもかかわらず、避難所で共同生活を送る人々と寝る空間をシェアすることで、安心して眠れるようになったという話も紹介している。
◆睡眠ではなかった?居眠りの社会的意義
しかし、これだけでは居眠りが社会的に許容されることは説明できないという同氏は、詰まる所、居眠りが睡眠と捉えられていないことに気づいたという。居眠りの「居」は、「その場にいること」を意味し、「眠」は寝ることを示す。つまり居眠りは、その場の社会的状況を邪魔しない限り浸ることができる従属的な行為と見られており、精神的には「アウェイ」でも、積極的貢献が必要なときにはすぐに現場に戻ることができる行いだと同氏は説明する。
ステガー氏は、原則として職場においては出席と積極的参加が求められ、居眠りは無気力と職務怠慢と取られるが、同時に仕事に関係した疲労の結果とも受け止められると説明する。会議では疲れを押して出席していることが、実際の業績よりも価値を持つこともしばしばだとし、これを「参加することに意義がある」というオリンピック精神に例えた日本人「内通者」のコメントも紹介している。
最終的に同氏は、居眠りは必ずしも怠惰な傾向を表すものではなく、任務から一時的に離れる方法を与えることで、通常業務のパフォーマンスを担保するという、日本社会の非公式な特色だと結論付けた。よって睡眠と居眠りは、全く別物だという見解に達している。