住んでみると印象変わる? 豪州記者の日本賛美旅行記に居住者から賛否両論
昨年、日本を訪れた外国人の数は、日本政府観光局(JNTO)によると、1973万7400人(推計値)となり、過去最高を記録した。今年に入っても増加傾向は続いている。1月の訪日外国人数は昨年に比べ約1.5倍となり、1月としては過去最高となった。オーストラリアからの来訪者数も伸びており、昨年は37万6200人と過去最高、この1月にも単月として過去最高を記録した。豪メディアが最近発表した日本旅行記では、日本を訪れたオーストラリア人の驚きが語られている。日本のどんなところに驚いたのだろうか。
◆現実世界ではないような気がするほどの礼儀正しさ
豪ニュースサイトNews.com.auで、ライターのアリス・ウィリアムズ氏が語るところでは、日本は、オーストラリア人である彼女の観点からして、落ち着かないほど礼儀正しい国だったそうだ(同氏にはマナーに関する著作もあるにもかかわらず)。日本に着いて、東京で地下鉄に乗った際に、乗客の清潔さや、態度の静かさが、自国の交通機関とあまりに異なっていることにまず驚いたようである。
「私は日本人の思いやりや、きちんとしている点がとても好きだったけれども、マナーや行儀良さがあまりにも現実離れしていたので、滞在中ずっと、日本をテーマにしたディズニー作品のスノーグローブのようなものの中で暮らしているように感じた」と同氏は語っている。
そして同氏は自国の光景と対照しつつ、日本で目にし、彼女を驚かせたものをいくつか列挙している。それは例えば、セブン-イレブンで店員が「いらっしゃいませ」と言うことや、デパートで店員が客にお辞儀をすることなど、日本人であれば見慣れている光景だ。「日本では、店員は客の後ろ姿にまでもお辞儀をする」と、さも驚いたように語っている。「対照的に、オーストラリアを訪れる日本人には、私たちは野蛮人のように見えるに違いない」と語る。
同氏は、一つ一つは些細な儀礼的なあいさつをたくさん受けることで、お返しに自分たちもより礼儀正しくなって、誰もがもう少し心地よく毎日を過ごす効果がある、と語っている。
◆神社に奉納されている酒樽にも驚いた
また同氏は、鍵がかかっていないと見える自転車が、無造作に街角に止められていることや、神社に奉納された酒樽が並んでいることにも驚いている。オーストラリアだったら盗まれるに違いないだろう、というのだ(自転車の件は彼女の勘違いで、実際には鍵がかかっているのだと、複数の読者からコメントで突っ込まれていた)。平均的オーストラリア人にとっては、落ち着かなくなるほどの他者への信頼だ、と語っている。
同氏は日本を1ヶ月旅したそうだが、旅の終わりごろには、オーストラリア人の非友好的態度、人前で鼻をかむこと、公共輸送機関での、ののしり声を渇望していた、と語る。「私たちは粗野で、不作法で、公共輸送機関を自分たちのプライベートの売春宿と勘違いしているが、少なくとも私たちはオーストラリアでは自分たちの立場を知っている」と語っている。
◆旅行者は賛同、居住経験者は反対
同氏の記事に対して、コメント欄では、日本への旅行経験者や居住経験者、在住者の意見が飛び交っていた。
旅行経験者はおおむね、同氏の経験談に賛同し、日本について好意的に語っている。
・最後以外は同意。本当にののしり声や不作法さを懐かしんだの? 自分はないな!
・私は渡航した時同じことに気づいた。しかし私の反応は正反対だった。シドニーに戻ったとき、私と妻は、日本に戻りたい、日本に引っ越したいと言うのを止められなかった。シドニーの全体的な汚さ、以前は決して気づかなかった不親切な雰囲気、人々の不作法さ、のろのろ運転の電車には耐えられない。日本文化からオーストラリア人が学べることはたくさんあると感じた。
・20年間シドニーの公共輸送機関に乗っていない。不快を催させるからだ。むかむかさせる不作法な振る舞いと不潔さを慕う人がいるとは思わない。
・私は昨年9月、妻と日本を訪れたが、ここで述べられている全てのことに同意する。あれほど礼儀正しく、フレンドリーで、同時に奇妙な国に行ったことはない(韓国は近いけれども)。われわれ西洋人は日本人から親切になる方法を学ぶべきだ。
・「オーストラリア人」であることからの休憩を求めて向かうのに、地球上で最もいい場所(ニセコを除く)。
旅先の魅力として、日本が安全な国であることも挙げられている。
・私は日本で過ごす時間を愛した。すばらしい休日の旅行先として、友人たちに日本を勧めることをためらわないだろう。どの旅行先よりも安全を感じた。
・まるで違う星にいるかのように感じながら、その上完全に安全と感じる場所なので、日本が大好きだ。
その一方、日本に住んだ経験のある人や在住者などからは、ウィリアムズ氏の見方に対して否定的な意見が見られた。
・他の人も言っているとおり、これは旅行者の経験だ。日本にいくらか住んでみれば、物事は違うふうに見えるだろう。あなたが目にした自転車には全て鍵がかかっていた。泥棒は日本でも起こる。自分は10年間で2台盗まれた。
・(8年間住んだが)自分の経験では、日本人は総じて、全く冷淡でよそよそしい。
・日本に行ったことがあるが、東京ではあなたが言ったようなことはほとんど何も経験しなかった。滞在中はほとんど田舎で過ごしたが、その時はたしかに少しはこういった経験をしたかもしれない。東京に行ったとき、人々はむしろ不作法で、忙しすぎて助けてくれないと感じた。(略)あなたの記事はひどく誇張されていると思う。
居住経験者からの肯定的な意見もある。
・最も素晴らしい場所で、東京ではうちの子どもたちだけで歩いても安全だと知って本当に喜んだ。私にとっては世界で一番良い国民。
また、昔のオーストラリアは今のよう不作法ではなかった、と懐古している人もいる。
・確かに日本には、私たちオーストラリア人にとって普通じゃないと感じるものがあるが、40年前にはオーストラリアも、今ほど日本からかけ離れていなかった。
・オーストラリアもかつてはこんな感じだった。公の場で丁寧で、良い身なりをし、正直だった。あなたぐらいの年齢の人は決して見たことがないだろう。これらのこと(日本の礼儀作法)が異常だという記事を書くということだけでも、私たちがどれほど落ちぶれたかを示している。
◆日本への旅行を安価に楽しむ方法を紹介
News.com.auの別の記事では、日本での旅行をより安価に楽しむ方法について、他の筆者が提言している。
「日本への旅行の予約が増えている中、日本での休日を限られた予算で楽しむ方法」として、記事が挙げているのは、例えば酒をスーパーマーケットで購入することだ。「日本のようなアジアの国の良いところは、酒がスーパーマーケットで売っていることだ」と語り、お国柄の違いをうかがわせる。酒屋で買うよりもぐっと安いばかりでなく、西欧人フレンドリーなレストランよりも、常に幅広い品ぞろえがある、と語っている。
また(レストランではなく)居酒屋で食事をすることを勧めている。食べ・飲み放題のプランのある居酒屋は非常にお得で、伝統的かつおいしいお好み焼きやラーメンのような日本食を、伝統的な日本式の環境で味わうことができるだろう、と語っている。
記事では他にも、レンタル自転車で街を探索することや、カプセルホテルに宿泊することなどを提案している。