シリア政府ミサイル攻撃―悪あがきか、危機の前兆か?
シリアでは、長引く内戦で窮地に追い込まれているアサド政権による攻撃がエスカレートしている。シリア政府軍は今週に入ってから、反体制派に向けて短距離弾道ミサイル「スカッド」を発射したことが米政府による発表で明らかになった。首都ダマスカスから反体制派の拠点がある北部へ向けて最低6発は打ち込んだ模様。死傷者や被害規模は確認されていない。
ニューヨーク・タイムズ紙は、反体制派が勢力を増す度に政府軍は攻撃をエスカレートさせてきたと報道している。今年6月には空軍による攻撃を開始したが、それでも劣勢となったため、ミサイル発射に踏み切ったのだろうと分析した。今回の攻撃の意図は明らかになっていないが、フィナンシャル・タイムズ紙によると、スカッドは命中率がそれほど高くないため、反政府派への攻撃手段としては適切ではないとの意見もあるようだ。罪のない国民に被害が及ぶ可能性をおしてまでの今回の決断に、政府軍の苦しい立場が伺える。
また、米国は政府軍に対して化学兵器を使用しないよう警告をしており、その一線を超えた場合は介入措置に踏み切ると示唆している。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今回の攻撃は化学兵器の証拠がない上に、ミサイルを用いた理由が明らかではないため、米国は重要視していないという見方もあるとしている。しかしニューヨーク・タイムズ紙は、アサド政権は化学兵器さえ使用しなければ国際社会から介入されることはないという思いのもと、すれすれの次元で攻撃を展開している点が問題だとも指摘している。こうした状況下で、NATOは隣国トルコへの影響も考慮し、地対空ミサイルシステム「パトリオット」の配備準備を進めている。
今回のミサイル発射が単に反体制派を脅すためだったのか、化学兵器の装填を試すものだったのかは現時点では明らかではない。一部では外貨を必要とする北朝鮮がシリアにミサイルを販売していると推測されているため、内戦の拡大が懸念されるところだ。