群を抜く新国立競技場の建設費2500億円 費用の膨張はロンドン五輪でも問題に
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックのメイン・スタジアムとなる、新国立競技場の建設を巡って大もめの事態となっている。採用されたイラク系イギリス人建築家のザハ・ハディド氏の斬新なデザインでは、技術的な見地から建設費や工期が当初の見積もりを大幅に上回ると予想されている。この件を海外メディアはどう伝えているのか。
◆さまざまな問題を抱える新国立競技場建設
ロイターは、新国立競技場建設を巡る紆余曲折を報道。新国立競技場建設が抱えている問題として、高騰する建設費、旧国立競技場解体の遅れによる期限内の完成への懸念、そして建設費負担を巡る対立を挙げている。
建築界のノーベル賞とされるプリツカー賞を受賞した日本人建築家の槇文彦氏により、よりシンプルなデザインの代替案が提案された。しかし、文部科学省は「現実的ではない」として、ハディド氏のデザインを採用する意向を示した。
ハディド氏のデザインは、コスト削減のために手直しが加えられているが、それでも2500億円ほどの費用がかかる見込みだ。この額は、歴代のオリンピック・スタジアムの建設費のなかでも群を抜いて高い。その負担についても、文部科学省の下村大臣と東京都の舛添要一知事の間で対立が起きており、先行きが平穏なものではないことをロイターは報じている。
◆新国立競技場に関する賛否両論
米CBSニュースは、賛否双方の意見を交えて伝えている。プロジェクトを監督する、ザハ・ハディド事務所の大橋諭氏によれば、「大規模なプロジェクト、特に公共のものは、注目を集めるものだ」とし、否定的なコメントや微調整は「どんなデザインでもある、改良発展のための過程の一部なのだ」としている。
反対派の意見としては、東京在住の甚野公平氏の声を採用。新国立競技場の建設と周辺地域の再開発のために、地元住民は立ち退きを余儀なくされているが、「よく知っていた地元のコミュニティから引き離される」と述べている。
テンプル大学日本校のジェフ・キングストン教授は、「優先順位の観点からも、持続可能性の観点からも、美的センスの観点からも、合点がいかないと皆さん思うのでは」と述べた。また「競技場をいっぱいにするイベントはそう多くはない」と述べ、莫大な建設費を回収できる見込みは低いのではという疑問を呈している(CBSニュース)。
◆見積りの甘さは前回のロンドンオリンピックでも?
2012年にロンドンで開催されたオリンピック・パラリンピックでは、実費が当初の予算を大幅に上回り話題となった。2005年にロンドンが開催地として選ばれた時の大会運営予算見積もりは約24億ポンド。ところが施設建設などの準備が進んだ2年後の2007年では、見積額が約4倍の92億9800万ポンドに跳ね上がった。最終的な費用は、イギリス政府の発表によると、89億2000万ポンドとなった。
また、メイン・スタジアムのサッカー競技などのために行われる改修の費用が約2億7200万ポンド(約530億円)に膨らむ見通しになったことを先週、イギリスのメディアが伝えている。このメイン・スタジアムの建設費も当初の2億8000万ポンドから4億2900万ポンドにと2倍以上に膨らみ、改修費と合わせると総額は7億ポンドを超えることとなりそうだ、と報じられている。