“中国共産党は崩壊しつつある”著名学者の主張、世界的話題に 5つの論拠とは
3月に発表された、中国肯定派の学者による中国崩壊論が、「今度は本物か?」と識者に衝撃を与え、ネットやメディアでいまだに話題となっている。これに対し中国メディアは、西側のご都合主義と不満を露わにしている。
◆中国通から驚きの崩壊説
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、『来る中国の崩壊』と題した記事を寄稿したのは、ジョージワシントン大学の国際関係の教授で、中国政策プログラムのディレクター、デービッド・シャンボー氏だ。
ウェブ誌『Slate』は、「共産党崩壊寸前」説は目新しくもないとするが、以前から中国共産党の強さと適応力を強調してきたシャンボー氏のような学者の口から、このような大胆な話が飛び出したことが、中国ウォッチャーに驚きを与えたと述べる。皮肉にも同氏は今年1月に、中国外交学院からアメリカで2番目に影響力のある中国専門家に選ばれている。
◆5つの兆候
シャンボー氏は記事の中で、政権のぜい弱性と党の組織的弱さに関する、次の5つの兆候を提示している。
1.中国の経済的エリートは、共産党システム崩壊を恐れ、海外に逃げる準備をしており、子弟を海外で学ばせ、市民権獲得のため子供を米国で出産し、海外で不動産を買いあさっている。
2.習主席は政治的抑圧を強めており、民主主義など、西側の普遍的価値を信任するものの洗い出しを行っている。
3.多くの体制支持者でさえ、そのふりをしている。プロパガンダは力を失い、指導者は裸の王様状態だ。
4.汚職は政府や軍のみならず、中国社会にはびこっている。腐敗撲滅運動が進められているが、汚職の摘発が権力闘争につながっており、恣意(しい)的な選択による粛清となっている。
5.中国経済は停滞し、「体制的なわな」にはまっており、安易な出口はない。消費は増え、官僚主義も減り、財政改革も導入したが、経済改革は既得権益を守るグループに阻まれている。
同氏は、解決には政治改革しかないと主張。しかし、習主席が恐れているのはソ連のゴルバチョフの二の舞になることで、解放よりも、統制を強めていくだろうと見ている。
◆中国メディアはほぼ否定的
『Slate』 は、シャンボー氏の記事に対し、中国国営メディアは脳卒中寸前と表現。人民日報傘下の『Global Times』は、すでに晩年を生きる同氏が「日和見主義者の仲間に入った」とし、「威厳を持ってふるまい、意見はよく考えるべき」と助言した。同じく政府系のチャイナ・デイリーは、同氏が中国のポジティブな側面を完全に無視し、偏見を持って見ているとし、典型的な米メディアの書き方だと批判した(Slate)。
ただし、中国の改革派歴史家、チャン・リーファン氏のように、シャンボー氏の意見を理解する声もある。ドイツの報道機関DPA通信に対し、チャン氏は「習主席は権力を集中させ、反腐敗キャンペーンを続けており、大きな危機に直面している」とし、「もし失敗すれば、結果は政権の手に負えないものとなるだろう」と述べている(Slate)。
チャイナ・デイリーに寄稿した、アメリカのICA研究所のリサーチ・ディレクター、ダン・スタインボック氏は、経済に関しての中国崩壊論に言及。崩壊論は、西側の経済が落ち込むと出てくる話題だと述べた。崩壊論者が根拠とする経済成長の停滞は、大きな絵のなかの一部にすぎないと説明。西側の政府と中央銀行では打つ手がなくなっているが、中国にはそれは当てはまらないとし、経済崩壊はないという認識を示した。
◆崩壊なしでも困難は続く
『Slate』は、世間一般の通念として、文化大革命、天安門事件などの危機を乗り越えた共産党は、新たな困難を克服するため、強く、抜け目ないままだと述べる。同誌はシャンボー氏の警告は真実であり、香港民主化運動や環境汚染等の、指摘されなかった問題も多くあると指摘。党は崩壊の危機にはないが、プレッシャーはかかっている、とまとめている。