原発事故でも活動できるロボットを…米国防総省主催ロボコン、日本勢最高10位

 米国防総省主催のロボットコンテスト「DARPAロボティクス・チャレンジ」(DRC)の決勝戦が、米カリフォルニア州で現地時間5日、6日に行われた。原発事故など、人間の活動が困難な災害現場での運用を想定した競技が行われた。優勝を収め、賞金200万ドル(約2億5000万円)を獲得したのは、韓国のチームだった。

◆震災当時、もしこのようなロボットがあったら……というところから始まった
 このコンテストは、米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が、2011年の東京電力福島第1原発事故をきっかけに企画したもの。災害時に人間には危険な環境で活動でき、器用さと頑丈さを備え、また移動できるロボットの製作を目的としている。出場できるのは、バッテリー駆動で、カメラ、センサーを備え、無線で遠隔操作されるロボットだ。

 DARPA職員でDRCを統括するギル・プラット氏は、もしこのようなロボットが震災当時に利用可能だったならば、福島第1原発のメルトダウンは避けられていただろうと主張している、とインターナショナル・ニューヨーク・タイムズ(INYT)紙は伝える。

 決勝戦では、階段を上る、ドアを開けて通る、バルブを一回転させる、自動車を運転するといった課題を計8個こなし、その得点とタイムで争われた。操縦者は約400メートル離れた地点からロボットを操作した。さらに、災害現場を想定し、無線接続の回線速度が制限され、かつ接続が途切れやすい不安定な状態で行われたため、ロボットはそれに対処できる必要もあった。

 決勝には23チームが参加した。アメリカから12チーム、日本から4チーム、その他、ドイツ、イタリア、韓国、香港のチームが参加した。INYT紙によると、数千人の観衆は、ロボットが課題をクリアするごとに歓声を上げ、ロボットが失敗したり転倒したときには同情の声を上げたという。アメリカ人も日本人のように、ロボットに対してますます親近感を持つようになっているらしいことがこの大会でははっきりした、と記事は述べている。

◆優勝したのは韓国のチーム。日本は最高10位
 優勝したのは、韓国科学技術院(KAIST)の「Team KAIST」だ。KAISTで開発された人型ロボット「DRC-HUBO」が、8つの課題を最速の44分28秒で全てクリアした。このロボットは、2足歩行の他、膝と足先に付けられた車輪を使って移動することができる。

 朝鮮日報によると、決勝に進出した24チーム(1チームはロボットの準備が間に合わず出場を断念)のうち8チームで韓国製ロボットの本体や部品が使用されたという。

 なお、2位のチームには賞金100万ドル、3位のチームには賞金50万ドルが贈られた。

 日本チームの最高位は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と産業技術総合研究所の連名チーム「AIST-NEDO」の10位だった。他には、東京大学、NEDOと東大の連名チームなどが出場した。

◆予選で圧勝した日本のチームがあったものの
 2013年12月に行われたDRC予選では、別の日本のチームが「楽々と1位を取った」と、米ニュース専門放送局CNBCは伝える。このチームは、東大の助教授2人がDRCに出場するために設立したロボットベンチャーのSCHAFTである。

 SCHAFTは、この予選の1ヶ月前にGoogleによって買収されていた。そしてGoogleの方針により、その後、DRCへの出場を取りやめている。

 CNBCによると、近年アメリカでは、Google以外にも、Amazon、Appleといった大企業がロボット会社に大口投資する例が続いたという。現在、アメリカのロボット産業は活況を呈しつつあるようだ。

 米ロボット産業協会(RIA)によると、米国内の工場ではおよそ23万5千台のロボットが使用されており、日本に次ぐ世界2位のロボット利用国となっているという。ロボットの低価格化が進み、従来は利用しなかった小、中規模の会社も利用するようになってきている。ロボットはあらゆる業界、あらゆる規模の会社に役立ちうるという世界的な認識を、(米国の)ロボット産業はわかり始めている、とRIA会長は語る。

 日本については、高齢化が進んでいることと、家庭用ロボットへのニーズが高まっているために、今後10年間で、医療・介護ロボットが産業ロボットを追い越しそうだ、との推測が記事で語られている。また、日本では今後、ロボット市場の規模拡大を目的とした取り組みが実施される予定であることを伝えている。

◆オートメーションではなく、人間と共同するロボットが今後のトレンド?
 ロボットは何十年もの間、アメリカの自動車産業の重要な部分だったが、現在、アメリカで大きく注目されるのは、人間と共同するロボットだとCNBCは語る。オバマ政権が2011年にスタートさせた国家ロボットイニシアチブでは、「人間との共同作業に特化した」新たなロボット研究開発におよそ3億ドル(約375億円)を費やしている、とジョージア工科大学のヘンリック・クリステンセン教授が語ったそうだ。

 DARPAもまた、INYT紙によると、人間だけでもロボットだけでも実行できない課題を完了する方法として、人間とロボットが共同することの重要性を、今年さらに強調するようになったという。

 AP通信によると、DARPAのプラット氏は、人々がロボットの動作の成功や失敗に対して歓声や同情の声を上げていたことは驚くべきことだと語った。ロボットが、人間のために技術的な課題を実行するばかりでなく、人間同士を結びつけるのに役立つ可能性があるということは、DRCにとって最大の教訓の一つだと思う、と語っている。

Text by NewSphere 編集部