1~3月期GDP3.9%増、“驚きの”上方修正 賃金も上昇で“希望が持てる兆候”と米紙
内閣府は8日、1〜3月期の実質GDPを年率換算3.9%増と、速報値(2.4%)から上方修正した。企業の設備投資が予想よりも活発だった事が主な要因だ。市場予想も大きく上回った。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)などの海外メディアは、驚きを込めて日本経済の復活の兆しを伝えている。
◆企業の活発な設備投資が要因
発表されたGDP改定値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.0%増(速報値から+0.4%)、年率換算では3.9%増と大幅な上昇となった。生活実感に近いとされる名目は前期比2.3%増(年率換算9.4%増)と、バブル期以来の高水準となった(日本経済新聞)。ブルームバーグ・ニュースによる事前調査の予想中央値は、0.7%増(年率2.8%)で、これも大きく上回った。
1日に公表された法人企業統計の内容を加味した結果、企業の設備投資が2.7%増と、速報値の0.4%増から大幅に引き上げられた(ブルームバーグ)。結果的に、これが全体の数字を押し上げたようだ。WSJはこれを「驚きの上方修正」、英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は「昨年の消費税増税アップ以来の最高のパフォーマンス」と伝えている。
WSJは、活発な設備投資の例として、2社のケースを挙げている。半導体メーカーのロームは、中国のスマートフォンと自動車の半導体需要増に合わせ、今年度の設備投資を54%増の750億円とする予定だという。清水建設は、国内のオンラインショッピング市場の拡大に対処するため、今年度、流通倉庫の建設に600億円を投じる計画だ。また、秋のスマートフォンの新製品発売に備え、需要が見込まれる部品の在庫を増やし始めている電気メーカーもあるという。
◆夏のボーナスアップも期待できる?
一方、GDPの6割を占める個人消費は0.4%増(年率換算1.5%増)と速報と変わらなかった。WSJは、「国内消費の低調さを払拭できない限り、この好調なペースは維持できない」とするエコノミストたちの見方を伝えている。
しかし、WSJは別の記事で「日本経済は低迷からやっと抜け出したが、消費者はまだ十分に役割を果たしていない。だが、そんな状況も間もなく変わるかもしれない」とし、企業の業績好調と共に賃金アップと、それに続く個人消費の本格回復も期待もできるとしている。同紙は、今回の予想外のGDPの伸びは先進国中最も早い成長ペースだったと記す。
厚生省が2日に発表した速報値によれば、4月の1人あたりの現金給与総額(名目賃金)は、3月の横ばいから前年同月比0.9%増と上昇に転じた。WSJは「ほんの1カ月の数字とは言え、日本では年度初めの4月に新賃金体系が適用される企業が多いことから、向こう1年間に希望が持てる兆候だ。夏のボーナスシーズンの上昇率はさらに高くなるだろう」と期待を寄せている。
◆今後はペースダウンの予想も、輸出に明るい兆し
WSJは「黒田東彦日銀総裁は、力強い労働市場が最終的にはインフレにつながると主張してきた。今回のGDP改定値は総裁の主張を裏付けている」と評価。うまくいっている現状で日銀が近い時期に追加金融緩和に打って出る公算は少ないと見ている。
ただし、今後は設備投資が一段落することなどに伴い、日本の経済成長はペースダウンすると見ている識者が多いようだ。日本経済研究センターのまとめでは、4〜6月期のGDPは1.7%増(年率換算)に落ち、7〜9月期も2.0%にとどまるという予測が出ている。
貿易収支の改定値は、輸出2.4%増、輸入2.9%増で、それぞれ速報値と同じだった。今回は目立って良い数字は出ていないものの、海外に製造拠点を移していた日本の製造業が円安の恩恵と共に国内回帰しているとも言われている。WSJは、「いい数字がようやく出始めている」と、輸出も今回の好調要因に挙げている。FTも日本経済の全体像を、消費税増税のショックから徐々に回復していると見ているようだ。