景気回復の第一段階?「在庫投資」増めぐり海外メディアの評価分かれる 1~3月期GDP
内閣府は20日、今年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。その成長率は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算2.4%増だった。前期から2四半期連続のプラス成長で、伸び率も拡大した。景気回復を示すものだ、という評価がある一方、GDPを押し上げた最大の要因が民間在庫投資の増加だったことから、それほど喜べる内容ではない、とする評価もある。
◆個人消費、設備投資ともに増加。設備投資は1年ぶりにプラス
GDPの約6割を占める個人消費は、前期比0.4%増となった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙調査によるエコノミスト予想では、0.2%増とされていた。
企業の設備投資は0.4%増となり、4四半期ぶりにプラスとなった。好調な業績がようやく国内での投資に結びついた、と毎日新聞(20日)は伝える。ロイターは、企業投資の改善は、持続的な経済成長とインフレを引き起こすのに欠かせないものと見なされている、と語った。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは、ブルームバーグで、「企業は、収益が増えるにつれて、だんだんと、さらなる投資に不安を抱かないようになっている」と語っている。
家計支出、企業支出の着実な回復のおかげで、驚くほどしっかりしたGDP成長率がもたらされた、とWSJ紙は語る。同紙調査によるエコノミスト予想では、年率換算1.5%増とされていた。不況からの回復が加速していることが、データから示される、としている。BBCによると、この成長率は「非常に有望」なものだとアナリストらが語っているという。「景気回復は順調に軌道に乗っているようだ」と、あるエコノミストはBBCに語っている。
◆賃金上昇、雇用堅調で、個人消費は今後も順調?
米ニュース専門放送局CNBCは、個人消費がGDP成長の原動力になった、と語る。消費税率引き上げ、低賃金、物価上昇に打撃を受け、家計支出の削減が続いていたが、この成長率は、それが反転したしるしかもしれない、と語っている。なお、個人消費は3四半期連続でプラスだった。
CLSAの日本担当ストラテジスト、ニコラス・スミス氏は、「消費は今後、加速することでしょう。考えてみてください。2.3%の賃上げがあり、労働市場は非常にひっ迫しています。ですから、『社が自分を解雇することはできない、代わりの人間がいないのだから』と誰もが知っています」と、CNBCに楽天的に語っている。
◆在庫が増えたのは、消費が追いついていないせい?
一方で、在庫投資の増加の大きさから、消費は十分に回復していないのではないか、と疑う声もある。
内閣府によると、1~3月期のGDP成長率0.6%増のうち、0.5%分は在庫投資の増加によるものだった。WSJ紙は、もしもこの分がなければ、年率換算の成長率は2.4%ではなく、わずか0.4%になっていたところだ、と語る。
BBCは、昨年の消費税率引き上げによって、個人消費は鈍化しており、依然としてその影響から回復中だと語っている。WSJ紙は、売れていない商品の増加が暗示しているのは、消費が生産に追いついていけなかったのかもしれないということだと語る。
◆在庫投資の増加は持続的な景気回復に必要なステップ?
企業が戦略的に、在庫投資を増加させていることも、当然考えられる事態だ。
富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、「日本の在庫投資はなぜ重要なのか」とBBCで解説している。企業は、今後の需要の伸びが見込まれるときだけ、意図的に在庫投資を増大させる。そのため、在庫投資は、景気回復過程における成長の重要な指標である、と氏は語る。
企業は、たとえ今後の見通しを楽観していても、これまでの経験を踏まえて、すぐには新規設備投資に至らない。まずは、現行の生産能力を活用し、在庫を積み上げて、それでしのごうとする。それでは不十分になって初めて、設備投資に乗り出す――というのが趣意のようだ。
その第1段階を、いま私たちは目にしている、と氏は語る。次の段階は、その販売で、より収益を上げることだ。それがうまく行けば、私たちはついに、政府ではなく民間主導の、持続的な景気回復を目にすることになる、と氏は語る。
ブルームバーグは、年率換算で2.4%増のGDP成長率を維持できるかどうかは、企業が倉庫に積み上げている製品の購入に、消費者が乗り出すかどうかにかかっている、と語る。