「米国と同盟国を脅かす」中国の新型早期警戒管制機KJ-3000が初飛行
昨年末、中国人民解放軍空軍の新型早期警戒管制機(AWACS)と思われる画像がSNSに出回った。米空軍のE-3「セントリー」に匹敵する可能性があるとみられる。米外交メディアは同機が、中国が「アメリカとその同盟国を脅かす」うえで重要な役割を担うと指摘する。
◆1000キロ先まで探知可能か
新型機は4発ジェット機で、KJ-3000との呼称が有力視されている。英テレグラフ紙は、「非常に危険な中国の軍用機」であると表現。広胴の機体構造と4基のジェットエンジンから判断して、中国人民解放軍空軍のY-20輸送機・給油機を基に開発された可能性が高いという。
Ok, it goes on and on and on: second surprise this morning, the new KJ-3000 (?) AEW performed its maiden flight at XAC and from what can be seen on the first few small & blurry images, it is as expected a Y-20B-based design featuring a large rotodome but also a bulge on the tail. pic.twitter.com/MTp9A6dfDh
— @Rupprecht_A (@RupprechtDeino) December 27, 2024
一般に早期警戒機は、輸送機や旅客機を改造し、機体に大型レーダーを搭載した航空機だ。機内には各種専門家や航空戦指揮官が任務にあたる作業スペースを備えており、レーダーによる監視範囲の拡大だけでなく、空中指揮所としての役割も担う。
米外交誌ナショナル・インタレストは、KJ-3000が「AESAレーダーを搭載し、探知範囲は推定372〜621マイル(約600〜1000キロ)」と報じている。F-22やF-35などのアメリカのステルス戦闘機を探知でき、同時に100目標まで追跡可能だとしている。
◆中国空軍の監視能力は「大幅向上」か
中国人民解放軍空軍はすでに、数十機の早期警戒管制機を実戦配備している。しかし、これまではプロペラエンジン機が主体だった。テレグラフ紙はKJ-3000の登場により、同部隊の能力が大幅に向上する可能性があるとみる。ジェットエンジンを搭載した早期警戒管制機は、より高速で高高度での飛行が可能で、監視可能な空域が広がる。さらに、敵の攻撃に対する生存性も向上する可能性がある。
米軍事メディア『ウォーゾーン』は、KJ-3000が「速度、航続距離、滞空時間の面で優位性を持つ。より高高度での運用が可能で、これは特に重要だ。地形などの要因で地上レーダーが捉えられない低空飛行の航空機やミサイルを、上空から探知・追跡する能力を向上させる」と報じている。
◆中国が「米と同盟国を脅かす」一助になる、と米誌
KJ-3000は、アメリカと同盟国の脅威となるおそれがある。ナショナル・インタレストは、「中国は台湾侵攻能力を構築し、アメリカとその同盟国を脅かす体制を整えている。KJ-3000はその中で不可欠な役割を果たす」とみる。記事はまた、「恒例ながらアメリカは、この課題に対して十分な準備ができていない」と警鐘を鳴らす。
台湾情勢にも大きな影響があるとみられる。テレグラフ紙は、台湾有事における米軍の対応について、3つの課題を指摘している。中国がKJ-3000を含めてロシアを上回る数のAWACSを配備する可能性があること、地理的条件が米軍に不利であること、そして敵のAWACSを迎撃するためのドローンやミサイル配置に適した場所が限られることだ。
台湾有事の際、米軍が中国のKJ-3000に対抗するのは困難と予想され、米国防総省がKJ-3000への効果的な対抗手段を見出すことは難しいかもしれない、と同紙は述べる。
中国軍の新型早期警戒管制機導入で、台湾情勢の緊張は一段と高まりそうだ。