韓国の金利、初の1%台…円安に対抗か アジアの通貨戦争を米紙懸念
韓国銀行が12日、政策金利を2.00%から過去最低の1.75%に引き下げた。市場は予想外の「サプライズ」だと反応し、円安政策を進める日本への対抗策だという見方も広がっている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)などが関連記事を掲載している。
◆「ウォン安を狙った利下げ」
韓国銀行のイ・ジュヨル総裁は、「国内需要の低迷が続いており、このままデフレに陥る可能性も排除できない」と同日の会見で語った。円安に対抗するウォン安を狙う意図があるかどうかについては、明言を避けたという。
しかし、アジア経済を専門とするコラムニスト、ウィリアム・ペセク氏は、ブルームバーグのコラムで、韓国の政治家らが最近、韓国の輸出企業が日本企業に対抗できるよう、ウォン安政策を強く求めていたと指摘。「中央銀行がついにその圧力に屈した」と記している。
タイもこの前日に韓国と同様の利下げを決めた。WSJはこうした動きを受け、「通貨戦争の前触れとなるか?」と論じる記事を掲載した。その中で、韓国の利下げについては、「本質的にはウォン安を狙ったものだ」とする識者の見方を取り上げている。円だけでなく、急落しているユーロも視野に入れているという。
◆アジアで「通貨戦争」の危機
WSJは、さらに、中国、インド、シンガポールなども今年中に利下げに踏み切ると予想し、アジアの「通貨戦争」の勃発を危惧している。多くの識者は、「それでは各国が需要を奪い合うだけだ。全体の需要の伸びは期待できない」と考えているという。
ペセク氏も、韓国のケースについて、「為替レートのことばかりに取り憑かれるのは、もうやめなければならない」と述べている。産業の国際競争力を通貨安だけに頼るのは間違いだとし、むしろ企業の創造性と生産性を上げる構造改革を景気対策の中心に据えるべきだと主張している。
同氏は、日本型のデフレスパイラルに陥ることを、準恒久的なデフレに苦しむ“ジャパニゼーション”と表現する。そして、韓国がこれを避けるには、今回の利下げだけでは不十分で、「ただちにさらに金利を下げるべきだ」と主張。「金融政策の変化が実経済に影響するまで半年かかることを考えれば、これ以上待つことは許されない」と述べている。
◆円安は危険水位目前
一方、日本の円安について、WSJは「行き過ぎだと考えられるレベルにまで達している」と記す。安倍首相の経済アドバイザー、本田悦朗氏は、125円を危険水位とし、これ以上の金融緩和は経済的な「オーバーヒート」を招くと語っている。
また、極端な円安は、日米のTPP交渉にも影響すると見られている。WSJは、TPPに通貨操作を禁じる条項を盛込むべきだという声が米議会で強まっている件を取り上げている。また、円安が進めば進むほど米議会で承認を得るのは難しくなり、TPPを構造改革の要とするアベノミクスにとっても、「深刻な後退となるかもしれない」と記している。
同紙はさらに、来週明らかになる予定の春闘の結果に注目する。1990年代以来最高の2.5%から3%のアップとなれば、日銀はデフレ脱却に向かっていると判断し、これ位以上の金融緩和は行わないと指摘している。反対に「残念な結果」になれば、追加緩和を求める声が高まり、円安が危険な領域に達する可能性があると見る。「円は既に安定的なゾーンの限界に近づいており、これ以上円安が進めば、安倍首相と黒田日銀総裁は、難しい立場に追い込まれるだろう」とWSJは結んでいる。