北朝鮮、再びミサイル発射へ―なぜこの時期に?―
北朝鮮が、今月の 10 日から 22 日の間に大陸間弾道ミサイルの試射を行うことが分かった。同国は、「人工衛星」打ち上げのためであるとしているが、米国などは、最終的に核を搭載できる長距離弾道ミサイル実験になると見ている。打ち上げが予定されているミサイルが、中国~沖縄方面を通過するためか、関係各国は、北朝鮮から事前に打ち上げの通達を受けた。なお、4 月にミサイル打ち上げ実験を強行(失敗)した際は、安保理決議違反のため、北朝鮮関連企業への制裁が強化されていた。
北朝鮮がこの時期にミサイルを発射するねらいは何か?
ニューヨーク・タイムズ紙は、北朝鮮がこれまで核とミサイルの脅威を利用してきた時期に着目し、関係国で政権の移行が行われる時期に多いと分析した。すなわち同紙は、新政権との交渉から譲歩を引き出すために北朝鮮が圧力をかけていると見ている。具体的には、12月19日の韓国大統領選、12月16日の日本の衆議院選挙、来年1月のオバマ政権二期目開始という政治日程について同紙は触れている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、金正日氏の一周忌に合わせてミサイルを発射することによって、金(キム)一家の威光を高める目的があるとしながらも、資金援助の可能性がある韓国政治家への影響力を強めるねらいがあるとも見ている。特に、北朝鮮の新聞が、韓国の保守系政党に対する批判を月平均 150 回(前回選挙時の3倍)も行なっている点に言及している。フィナンシャル・タイムズ紙は、11月29日に失敗した韓国の人工衛星打ち上げと対比させることによって、4月の失敗では面目を失った金正恩氏の名声も高まる可能性があると報じている。
またフィナンシャル・タイムズ紙は、中国と北朝鮮の関係に焦点を当てている。同紙は、中国外務省のスポークスマンが北朝鮮ミサイル発射の発表を受けて「懸念している」との談話を出したことを報じる一方で、中国が北朝鮮への支援を停止することができない理由を分析している。同紙によると、支援中止によって北朝鮮が崩壊するならば、(1) 大量の難民が中国に流れることになるとともに、(2) 半島を統一した韓国と米国の同盟関係が東アジアで存在感を増すことになり、また、(3) 中国は北朝鮮の港を重要視しているという。