渋谷区、同性カップルに結婚相当証明書 海外のように地方から国に波及するか

 東京都渋谷区は12日、同性カップルに「結婚に相当する関係」を法的に認める証明書を発行する計画を明らかにした。証明書発行に関する条例案は、3月の初めに議会に提出され、早ければ、新年度4月1日から有効となる予定だ。

◆日本は同性カップルに寛容だが法的庇護がない
 もし、渋谷区が条例案を承認すれば、地方自治体としては日本で初めて、同性カップルを法的に認めることになる。今回の計画について、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、渋谷区は個人をありのままに受け入れる社会を実現するという希望から決定に至った、と報じている。しかしながら、案は、議会の保守的な議員らから反対を受けることも予想される、とLGBTIコミュニティーに関する話題を扱うメディア『ゲイ・スター・ニュース』は報じている。

 日本国憲法では、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」と定めている。区の職員は共同通信に対し、証明書の発行は、「結婚のシステムとは完全に異なるもの」だと説明している。

 一方でAFPなどは、日本では同性カップルへの法的庇護がないが、感情的には彼らに対し割合寛容で、あからさまな敵意を向けられることは稀だ、と伝えている。

 法案の立案者、渋谷区議会の長谷部健議員によると、調査を行った結果、東京都の住人の約5%は同性愛者であることがわかったという。「渋谷は国際色豊かな区だ。そのため、世界レベルの多様的価値を有するのはまったく自然なことではないか」(ニューヨーク・タイムズ紙(NYT))と語っている。

◆問題の軽減を意図
 同性カップルは、2人で住居を借りたり、病院にパートナーを見舞ったりするときに、親族とみなされないためしばしば差別を受ける、と海外各紙は説明している。新しい法案では、20歳以上の渋谷区住人であれば、お互いを後見人として認める内容だという。

 渋谷区の担当者は、「企業や病院などの組織に、同性カップルの希望を尊重するよう求めていく」、「証明書の発行がどれほど有効かはわからない。この努力が、(同性愛者の)コミュニティーが直面している様々な個々の問題を軽減してくれることを願っている」(AFP)と述べた。

◆国が同性婚を認めることに期待
 渋谷区の桑原敏武区長は、「性的にマイノリティーな人々の存在も尊重する社会、それを実現する努力の一環として、『パートナーシップ証明書』の発行を決めた」(AFP)と説明した。区の担当者は、現行の法律では、証明書に法的拘束力はない。また、法的に結婚を証明するものでもない。WSJは、性的マイノリティーに支持を示そうとする区の試みだ、としている。

 ゲイ・スター・ニュースは、証明書に法的拘束力はないが、同性愛者の権利について、関心を高めることになるだろう、とみている。さらに、その他の地方自治体や、日本政府に影響を与えることになるかもしれない、と予想した。

 京都産業大学の渡邉泰彦教授は、同性カップルを地方自治体が法的に認めることは、同性婚を認める法律制定へ繋がるのではないかとみている。「ドイツやスイスでは、地方がまずパートナーシップシステムを有効なものとした。そしてそれが、国の制度に反映された。日本でも同じような流れになるのではないか」(ゲイ・スター・ニュース)と述べた。

 東京都中野区議会の石坂わたる議員は、渋谷区の動きを評価し、国としても同性愛者の法的立場を強化することを期待している。日本は「世界に遅れをとっている」、「しかし、これがはじめの一歩となるだろう」(NYT)と語っている。

Text by NewSphere 編集部